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2015年5月11日 (月)

『極道大戦争』を楽しむ

6月20日公開の三池崇史監督『極道大戦争』が楽しかった。チラシには「三池崇史の原点回帰」と書かれているが、私は彼の初期のVシネマ作品などを見ていないので「原点」はわからない。しかしこの映画を見て、それはB級映画のハチャメチャ感覚なのではと思った。

今回は、基本にあるのがやくざ映画と吸血鬼映画の合体だから、笑うしかない。最初は残酷な実録やくざ映画のように始まるけれど、親分役のリリーフランキーが謎の外国人殺し屋2人組にやられて、子分の影山(市原隼人)に噛みつく。「我が血を受け継いで、ヤクザ・ヴァンパイアの道を行け!」

そして影山に噛まれると、普通の人々もみんなやくざになってしまう。そして影山と外国人2人との対決が始まる。外国人の1人は、日本人の顔をしているが黒装束の牧師の恰好をして英語を話す。もう1人は東南アジア系だが、オタクの恰好をしているくせに驚異的な格闘技能力を見せる。

さらに殺し屋集団にぬいぐるみの「KAERUくん」とその親友のカッパまで加わる。やくざ+吸血鬼に加えて西部劇、東南アジアの格闘技、日本のぬいぐるみ文化、香港のヌンチャク、トラック野郎などなど、思い出すだけでもなんでも混入している。大地震まであるのだから。

そのうえ、親分の行く居酒屋の店主(でんでん)は、その地下で手足に鎖をつけられた奴隷たちに編み物をさせている。ボスの後継の頭はなぜか女(高島礼子)だし、ヤクザに襲われた女(成海璃子)は影山と愛を誓う。そのうえ、昭和の感じのセットがわざといいかげんに作ってあって、そこに書かれた文字など見ているだけで楽しい。

もう何でもありの世界だが、主人公を演じる市原隼人が妙にカッコいいし愛すべき存在に見えてくるし、終盤に大活躍するぬいぐるみのKAERUくんも悪くない。なんだこれはと思いながら見ていたけれど、125分はあっと言う間に過ぎた。

三池監督は毎年2、3本ずつ作るけれど、どれも楽しませてくれる。『一命』や『藁の楯』のような真面目な作品でも、必ず遊びがあってあえて「芸術」にはしていない。いまどき珍しい「映画屋」の感じがいい。この映画はカンヌの「監督週間」に出るらしいが、意外と評判がいいのではないか。

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コメント

いまからカンヌにいきます!

投稿: 石飛徳樹 | 2015年5月11日 (月) 10時12分

この映画のスタッフとして、日活調布スタジオに行きましたが、とてもワクワクするようなセットで楽しかった覚えがあります。しかし、極道大戦争後、その場所が取り潰されてしまうと聞いて少し悲しかったです。

投稿: さかた | 2015年5月11日 (月) 11時13分

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