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2015年5月10日 (日)

小林清親展の魅力

東京芸大美術館の「ダブル・インパクト展」にも出ていた小林清親の大規模な個展が、5月17日まで練馬区美術館で開かれている。明治時代に活躍した「最後の浮世絵師」と呼ばれているが、彼のモダニズムが何とも魅力的だ。

小林清親と言えば、「光線画」と呼ばれる明治初期の「東京名所図」で名高い。私が少し前から彼の絵が気になったのは、映画が世界的に生まれつつある時代、つまり1870年代から80年代にかけて、光と影を使って新しい世界を描こうとしていたからだ。

とりわけ街灯に照らしだされた夜の風景が印象に残る。例えば《日本橋夜》(1881=明治14年頃)は、江戸の中心だった日本橋に集う人々を影絵で描く。光るのはガス灯と提灯に遠くの家から漏れる光のみ。そこに馬車や人力車に乗る人々、あるいは歩く人々がシルエットで浮かび上がる。よく見ると、着物と洋服が混じっているようだ。

広重などの浮世絵で日本橋は何度も描かれてきたが、夜の風景はあっただろうか。もちろんこれはガス灯が生まれたからこれまで真っ黒だった夜の街が見えてきたわけで、「夜」の発見と言えるのではないか。ほかにも《浅草夜見世》や《両国花火の図》、《御茶水蛍》など、夜の風景は多い。

昼間の風景でも、新しい明治らしさを追いかけている。《東京五代橋乃一 両国真景》(1876年)は、前年に改修されて橋幅が広くなり、石柱になった両国橋を描く。何と電信柱が立っていて、電線もきちんと描かれている。行きかう人力車や馬車。

《海運橋(第一銀行雪中》(1876年頃)は、西洋風の石造アーチ橋の向こうにそびえ立つ銀行の和洋折衷建築を描く。その手前に傘を差す着物女性の後姿。全体は暗めだが、雪そのものが光を出しているかのよう。新しい風景を描きながら、古い日本も必ず描くところが彼の絵の魅力かもしれない。

私はこの画家は「光線画」しか知らなかったが、1880年以降は風刺画や戦争画まで描いているのが、この展覧会でわかった。1904年の日露戦争だと映画に撮られているが、10年前の日清戦争はこうした絵しかない。清の軍艦が沈没した図など、何ともリアル。

肉筆画や水彩画、スケッチもあった。さらりと描いた絵が巧みで、街頭の和服と洋服の人々などを描く。わずか150年前の明治初めの頃、近代化の第一歩を踏み出した日本の風景が何とも愛おしい。

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