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2015年5月 7日 (木)

『セッション』の不思議な魅力

アカデミー賞を3部門受賞した『セッション』をようやく劇場で見た。歌舞伎町にできた新宿TOHOシネマズに行きたいと思っていたら、TCXという大きなスクリーンでやっていたので行くことにした。席についてみると、ほぼ満員でびっくり。

連休中とはいえ、公開から3週間もたっているのに500席近く埋まるとは。見てさらに驚いたのは、この映画がずいぶんマイナーな映画だということだ。不思議な魅力があるのは事実だが。

ドラマーになるのを夢見て音楽の名門校に入学した19歳の青年が、鬼教師とバトルを繰り広げるだけの話だ。おそらく107分のうち、2/3は主人公がドラムを叩いているシーンだろう。そのうえ、2人の関係は鬼コーチの訓練ものかと思うと、途中から歪んできて『ブラックスワン』のようなサイコホラー的な様相となる。

監督は今年30歳のデイミアン・チャゼルで初の長編という。もしアカデミー賞を取らなかったら、東京ではアート系1館の上映だったような内容だ。さらに言えば、サンダンス映画祭で作品賞と観客賞を取らなかったら、アカデミー賞のノミネートもありえなかっただろう。

だから、この映画の主人公並みに野心溢れる新人監督が、音楽学校の新入生と音楽教師の対決という1点突破のドラマを作って、アカデミー賞まで駆け上がるのに見事に成功した映画のように見える。

この2人以外の人物はほとんど描けていない。父親や恋人はいかにもありきたりだ。しかしカメラは主人公のニーマンを執拗に追い、彼に重圧をかける教師のフレッチャーを最初は何を考えているかわからない存在として見せる。ドラマは中盤でニーマンが挫折するが、後半になって2人が再会し、フレッチャーの真の姿が明らかになってゆく。

その2人の心理合戦をおもしろいと思うかで評価は分かれると思うけれど、こんな映画があってもいい。監督の実体験に基づいた内容らしいし、そこがこの作品の成功の一番の理由だろう。

それにしても、歌舞伎町のTOHOは快適だった。スクリーン9は感じとして言うと日比谷のスカラ座に近いが、スクリーンはずっと大きく、座席数は少なくて席は大きい。日本橋のTOHOと同じくスクリーンは2フロアなので、新宿ピカデリーやバルト9のようなストレスがない。私の家からは西武新宿線を使えば近いし。

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コメント

新人監督初の長編作品といえば、今公開中の『私の少女』も素晴らしかったです。チョンジュリという女性監督の韓国映画です。

投稿: さかた | 2015年5月 8日 (金) 02時45分

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受信: 2015年5月 9日 (土) 15時18分

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映画「セッション」★★★★☆面白い! マイルズ・テラー、J・K・シモンズ出演 デイミアン・チャゼル 監督、 107分、2015年4月17日公開 2013,アメリカ,ギャガ (原題/原作:WHIPLASH) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい← 「世界的なジャズ・ドラマーを目指すニーマンと、 名門音楽学校の伝説の鬼教師フレッチャーの ... [続きを読む]

受信: 2015年5月19日 (火) 23時46分

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