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2015年5月26日 (火)

ためになる「シネマブックの秘かな愉しみ」展

フィルムセンターで8月2日まで開催の展覧会「シネマブックの秘かな愉しみ」は、実は全く期待していなかった。映画の本は私も何百冊と持っているが、本は読むもので展示するものではない、と思っていた。

あるいは、本は所有するのが楽しいのであって、他人の本を見てもつまらないだろうとも。ましてや展覧会ならば触れられないし、図書館に行く方がまだましではないか。

行ってみると、確かに本が並んでいるだけだ。それもガラスケースに入れてあって、触れられない。それでも妙ににおもしろかった。それ以上にためになった。一番の理由は、章立てによる分類が考え抜かれたものだったからだ。

第1章は「映画書のABC」で、映画初期のコレクション(本地陽彦氏所蔵)、映画史の基本書籍、映画会社の社史、映画文献目録本。このコーナーは役に立つ。この展示リストがあれば、基本的文献を知るのに実に便利。竹中労の「日本映画縦断」全3巻なんて知らなかったし。

第2章は「映画書は美しい」で、著名なブックデザイナーの映画本、小津安二郎など映画人がデザインした本、大型本と豆本に分かれる。これまたデザイナーの仕事を知るのに便利。豆本もおもしろい。

第3章は「映画をめぐる仕事」。「ザ・俳優本」「映画スタッフの本」「活動写真弁士の本」のような比較的知られた本から「検閲官・映倫審査員の本」や「映画人の映画以外の本」のようなマニアックなものまである。

そして第4章は「映画書アラカルト」で、子供向けの本から、対訳シナリオ本、私家版、ノベライズ、地方の映画史等々、多種多様な本が並ぶ。あるいは淀川長治さんらの直筆原稿まであった。

見終わって、ふと思った。私が関係した本が一冊もない。メリエスやリュミエールの翻訳本も研究書の共著もないのは当たり前かもしれないが、私が作った20冊を超す映画祭のカタログがいくつかあったらなあと思った。判型が同じなので並べても絵になると思うのだが。著名デザイナーのものもあるし。

とにかくこの展覧会は是非行って、400点近い作品リストをもらっておくと、映画についての文章を書くうえでためになるのは間違いない。出口にあった「銀座15番街」という小冊子の本地さんの文章で、『事典 映画の図書』という驚異的な映画書誌の本を書いた辻恭平氏が、東宝退職後、英会話学校を経営していたことを知って驚いた。知らないことは多い。

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