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2015年6月 2日 (火)

『日本のいちばん長い日』の保守性

8月8日公開の『日本のいちばん長い日』を試写で見た。なぜか『終戦のエンペラー』を思い出したのは、同じ松竹の配給のせいか、あるいはCGを使った焼け跡のシーンが似ていたからか。

もちろんこの映画は敗戦までを描いたもので、『終戦のエンペラー』は敗戦後が舞台だが、共に天皇が平和主義者として登場する。そして、どちらにおいても自分はどうなってもいいから国民を救いたいという意味の言葉を発する時に、思わず泣いてしまった。

もうひとつ比べるべき映画は岡本喜八監督による同名の映画だろう。昔は8月になるとテレビでいつも放映されたので覚えているが、クーデターの場面が中心だったように記憶している。

今回の映画化は、その年の4月に山崎努演じる鈴木貫太郎が77歳で総理大臣になる瞬間から始めている。そして8月15日に近づくにつれて、時間はゆっくりと進行する。「いちばん長い日」、つまり玉音放送の前日のクーデターの描写は、2時間15分の長さの後半分くらいか。

今回の映画の特徴は、東京大空襲やポツダム宣言、広島と長崎への原爆投下から玉音放送までの流れを、できるだけ史実に忠実に再現したことだろう。そのために全体がかなりのハイテンポで進み、台詞は早口で場面の転換も多い。そして随所にユーモラスな場面を組み込んでいる。

だからまじめな歴史の再現が2時間15分も続くのに、全く退屈しない。かといって散漫な印象を与えないように、個々の人物はきちんと描かれている。中心となるのは役所広司演じる陸軍大臣の阿南で、本土決戦を主張しながらも陸軍の暴走を止める苦渋と家族への思いが溢れている。

その次に重要なのは、鈴木総理大臣役の山崎努。半分ボケたような老獪さで敗戦の総理としての役割を淡々と果たす。昭和天皇を本木雅弘が演じるのは実は心配だったが、品のある特別な感じが出ている。そのほか、総理を支える迫水書記官長役の堤真一はユーモアたっぷりだし、反乱将校役の松坂桃李も悪くない。

個人的には原田眞人監督らしいいくつかの喜劇的要素がカリカチュアみたいで気になったけれど、総じて力作だと思った。しかしながら、天皇は平和を望み、その上に現在の日本があるといったまとめ方は、どこか今の日本の保守的方向と軌を一にする気がしたのは、考え過ぎか。

『ヒトラー~最後の12日間~』のような、もっと大胆な解釈のバージョンもいつか見てみたい。

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