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2015年6月 5日 (金)

『ゆずり葉の頃』への違和感

もともと試写で見た映画の悪口は書きにくい。タダで見せてもらっているし、配給会社や宣伝会社に知り合いは多いし。公開前の早い時期にネガティブなことを書くと、多少は影響が出るかもと思う。そんな時は、微妙な書き方にする。

しかし劇場で金を払って見る時は、正直に書く。悪口を書いても、もはや当たる当たらないは、公開後数日で決まっているから。

岩波ホールで見た『ゆずり葉の頃』は、苦手な映画だった。でもあまり悪口は書きたくない。監督は岡本喜八夫人で彼の作品のプロデューサーだった中(岡本)みね子で、八千草薫と仲代達矢という80歳を超えた2人が力演を見せるから。

それでも好きになれなかった理由ははっきりしている。物語は八千草演じる市子が、かつて憧れた青年が著名な画家になっているのを知り、思い切ってその展覧会を見るために軽井沢の美術館に行くところから始まる。

つまり美術の話で、私はその世界にくわしいので、見ていて違和感が募った。まず高名な画家のことを美術館の学芸員らしき男が「画伯」と呼ぶところ。いまどき、「画伯」という言葉を使うのは、古い画壇の世界にいる人々だけだろう。少なくともは学芸員は使わない。

そのうえ、学芸員は一般の観客にやたらに親切だ。これもありえない。市子が見たかった自分を描いた絵を「個人蔵」だからいつ出品されるかわからないと、市子に教える。物語が進むと、これが「個人蔵」ではなく「作家蔵」だとわかるが、この間違いはきつい。

ふとしたきっかけで市子は画家を訪ねることになるが、画家の夫人は何とフランス人でこれがまるでモレシャンの現代版のようにウソっぽい。これは耐え難かった。そもそも「画伯」の絵自体が、私にはピンと来なかった。著名な画家のものらしいけれど。さらに全体を情感たっぷりの音楽が覆っていたのも苦手だった。

それでも、八千草薫の自然な演技は良かったと思う。この役にぴったりの気品を備えていた。仲代達矢の場合は、私が彼の熱演にいつも引いてしまうこともあるが、それでも2人が踊るシーンは夢のようだった。たぶん監督が長い間思い描いていた映画なのだろう。その気持ちは伝わるのだけれど。

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