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2015年6月 6日 (土)

『戦場ぬ止み』の衝撃

『戦場ぬ止む』は、「いくさばぬとぅどぅみ」と読む。沖縄の辺野古基地のゲート前フェンスに掲げられた歌の一節という。「戦いに終止符を打つ時だ」の意味らしいが、これが3年前に『標的の村』で話題になった三上智恵監督の新作ドキュメンタリーのタイトル。

7月11日から公開とのことで試写を見たが、実はもう5月末から1日1回の先行上映が始まっている。沖縄を巡る状況が刻一刻と変わるなかで、「一日でも早く多くの人に見てもらいたい」という監督たちの意向を受けて上映が前倒しになったようだ。

だから、東中野の映画館でやっているのに、銀座で試写を見るという妙な状況になった。ところが見終わると、そんなことはどうでもよくなるくらいの映像の力に衝撃を受けた。

映画は2014年夏に大浦湾埋め立て工事が始まってから、11月の選挙で翁長知事が勝って流れが変わると思ったら、工事が再開されて年が明けるあたりまでの半年を描く。その後、翁長知事は東京で官房長官らと会ったり、最近はアメリカに行って帰ってきたところだから、まさに状況は刻一刻と変化している。

この映画を見ながらまず思ったのは、成田闘争と全く同じだなということだ。生まれ育った土地をいきなり国家に奪われようとした地元の人々が立ち上がり、体を張って工事を阻止する。機動隊は彼らを強制的に排除して、逮捕するという図式だ。

三上智恵監督の映画の撮り方も、三里塚シリーズを監督した小川伸介にかなり近い。抵抗する人々の側に寄り添うように身を置き、日常を淡々と記録する。彼らの家族も出て来るし、お金をもらって運動から離脱した人も機動隊も人間として写す。時おり監督の声が聞こえるが、姿は見えないところも似ている。

三里塚の映画がそうであるように、この映画にも魅力あふれる人々が出てくる。85歳の文子さんは、15歳の時に沖縄戦で米軍に火炎放射器で焼かれた経験を持つ。彼女は70年前に血の池の水を飲んだ場所を探し出す。

武清さんは、基地反対闘争を始めた年に生まれた17歳の長男やその下の双子の娘たちを連れて、毎週土曜日の夕方に基地の前に立ち、ろうそくを掲げて「大浦湾を守ろう」と訴える。そのほか、ヒロジさんとか、和成船長とか、寿里さんとか、みんな何ともいい表情を見せてくれる。

もちろん盛り上がるのは知事選挙の勝利で、この時ばかりはみんな本当にうれしそうだ。菅原文太の死ぬ直前の応援演説も泣けてくる。ところが選挙が終わると、3日後には工事が始まる。そして大晦日から新年へ。工事が始まるごとに抵抗は続く。

この映画は、ポレポレ東中野で今日からは15:15から上映されている。今、まさに見るべき映画だろう。

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