ぼくらの源ちゃんなんだぜ
高橋源一郎さんは、昔から私のヒーローのひとりだ。もちろん面識もないが、勝手に「高橋源ちゃん」と呼んでいる。彼が「朝日新聞」で「論壇時評」を書き始めたのは4年ほど前のこと。月に一度書かれた文章が『ぼくらの民主主義なんだぜ』という本になった。
大半の文章は連載時に読んでいる。けれど新書で読むと全く感じが違う。大きな新聞紙面の1ページで読むと、こんなところにこんなことかいていいのかなという感じがあったが、新書だとわりに普通の個人的なエッセーに見える。
読みながら、連載に触発されて本を読んだり、ネットを見たりしたことが何度もあったことを思い出した。例えば城南信用金庫理事長の「反原発宣言」や菅原文太の沖縄知事選応援演説のユーチューブ映像などは、普通の映画よりも何倍も感動した。
こうした「映像」は、これまで「論檀」では取り上げなかった。出だしに映画を持ってくることも多い。『100000年後の世界』『フタバから遠く離れて』『祝いの島』『立候補』『普通に生きる』などドキュメンタリー映画が多いが、『風立ちぬ』『アナと雪の女王』のようなメジャーな映画もある。
文章にしても、尾木直樹(尾木ママ)や読売のナベツネや美智子妃殿下など誰でも取り上げる。ナベツネを「私は、渡辺とは多くの点で異なった考えを持つが、戦争を語る時の真摯さにはうたれる」と評価するのだから幅が広い。美智子さんについてはその反戦の姿勢を「なぜか美しいと思い、体が震えた」
個人的なエピソードが多いのも興味深い。戦死した叔父たちの話、息子の話、学生時代の自分がデモ隊のそばを歩いていただけで逮捕されて、何カ月も拘留された話。一番すごいのは、父親の遺品につきあった女性の名前が十数人書かれていたことだった。
この連載が始まったのは、2011年の4月末で、東北大震災の直後。そして昨年の12月に自民党が大勝して、イスラム国で日本人が2人殺される今年の3月末まで。その時々のニュースに反応しながら書かれた文章という点でも通常の「論壇」とは違う。10年後に読んだら、最高の時代の証言になるのではないか。
現在がいかに矛盾や欺瞞に満ちているかを告発しながら、それでも希望を持とう、「ぼくらの民主主義なんだぜ」と訴える高橋源ちゃんは最高にカッコいい。いつまでも「論壇」を続けて欲しい。
そういえば私が「朝日」に勤めていた終わりの方で、「論壇」を担当していたことがあった。もちろん源ちゃんはいなかったし、担当とはいっても私の一番の役割は先生方や担当者たちの弁当の注文で、当時の自分には屈辱的だった。
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