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2015年6月21日 (日)

『フレンチアルプスで起きたこと』のうまさ

7月4日公開の『フレンチアルプスで起きたこと』を見て、うまいと思った。アメリカ各地の外国語映画賞で15冠というが、今風でどこかゲームのような家族劇にアメリカ人が夢中になったのはよくわかる。町山智弘氏がコメントに書いているように『ゴーン・ガール』みたいだし。

監督はスウェーデンのリューベン・オストルンドで、日本での公開は初めてだが、『プレイ』(2011)で東京国際映画祭の最優秀監督賞を得ている。黒人の少年たちが白人たちをカツアゲするシーンを固定カメラで撮った『プレイ』に比べたら、今回の映画はだいぶ一般向きだ。

スウェーデンからフレンチ・アルプスにやってきた幸せそうな家族4人。5日間の休暇を過ごすが、2日目の昼食中に起きた雪崩で、雰囲気は一転する。妻は留まって必死で子供2人を助けようとしたのに、夫は我先に逃げて、雪崩が収まってから何もなかったように戻ってきたから。

後の3日間は、この出来事を巡る夫婦の葛藤とそれに戸惑う子供たちが描かれる。そこに夫婦の友人たちが加わっての会話で、雰囲気はいよいよ気まずくなる。そこに子供が飛ばす小さなドローンが飛んできたり、外の謎の爆発音が聞こえたり。

人間の心の深淵を覗くようなドラマが巧みに構築されており、結局は万事打算で生きる男が悪いのだという根源的な真実が露呈してゆく。画面が真っ白で何も見えなくなる雪の効果を初めてとして、暗転や効果音などテクニックも冴えている。

この映画を見ながら、こうした葛藤自体がキリスト教的だと思った。日本ならば「だから何だ。みんな助かったじゃないか」でおしまい。西洋では「愛する」「信じる」ということが至上の課題なので、「あなたを信じていたのに」という詰問は絶対に無視できない。

終わりのシーンは極めて宗教的だが、ここでも人を「信じる」か否かが問われている。アメリカで好評だったのはよくわかるが、日本ではどうだろか。ちなみに配給会社の人の話だと「プレスの男性にはあまり評判がよくない」。たぶん「だから何だ」の日本のオヤジの反応だろう。逆に女性からは、「こんな男いるよねえ」という声が挙がるのではないか。

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