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2015年6月28日 (日)

『エデン』の喪失感

ミア・ハンセン=ラヴは、私が最も注目するフランスの女性監督。『すべてが許される』(07)、『あの夏の子供たち』(09)、『グッバイ・ファーストラブ』(10)と、どの映画も大好きだ。今年で34歳という若さなのに、最初の2本では若者が大人になった時の喪失感を描いていて驚いた。

もちろん女性監督だから、その男性を見つめながら生きてゆく女性の存在感がきっちり描かれていたが、『グッバイ・ファーストラブ』では、若い女性が中心となって初恋が破れて成長してゆくさまを鮮烈に描いていた。

9月公開の『エデン』では、再び男性が主人公だ。1990年代のパリを舞台に、大学生のポールが親友とDJデュオ「チアーズ」を作って有名になってゆくまでが第1部。第2部は2007年に始まって、次第に落ち目になり金がなくなって、DJをやめて普通の仕事に就くまで。

その中に友人との出会いと別れがある。とりわけ女性遍歴が何とも痛々しく、とりわけ絶頂期の時に一緒に住んでいたルイーズとの日々と再会は心に残る。いったん別れても、再会するとまた心が揺れる男女というのが、この監督らしい。とりわけ男性は、優柔不断で要領が悪く、すぐに別の女に惹かれるダメダメだが、優しさは人一倍の多情仏心型というか。

私はダンス音楽もクラブシーンも全くわからない。1990年代には仕事でパリに年に2、3回は行っていたが、こんな音楽が流行していたことも全く知らなかった。それでも見ていると、コンピューターや携帯電話が出てきた頃の時代の雰囲気は出ていたと思う。

主人公役のフェリックス・ド・ジヴリの淡々とした感じがいい。ルイーズ役のポーリーヌ・エチエンヌは童顔のぽっちゃりした感じで、この役にぴったり。ギョーム・ブラック監督の『女っけなし』や『やさしい人』で主人公を演じたヴァンサン・マケーニュの脇役も嬉しかった。

この映画で共同脚本を書いたのは監督の兄スヴェンで、ポールのように実際に「チアーズ」というDJレーベルを運営していたらしい。

この監督は17歳で女優としてデビューした後に、22歳から『カイエ・デュ・シネマ』誌で映画評論を書き、26歳で監督デビューという、まさに才女そのもの。4年前のフランス映画祭で『あの夏の子供たち』で来日した時に私はトークの聞き手をしたが、何ともシンプルで飾り気のない知的な女性だった。

フランス映画祭といえば、今年は現在開催中。調べてみたら上映は昨日だった。

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