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2015年6月29日 (月)

上野千鶴子の身の下相談

前にここで書いたように、「朝日新聞」の日曜版beの「悩みのるつぼ」は、上野千鶴子さんの回答が抜群におもしろい。車谷長吉さんもぶっ飛んでいたが、いなくなったと思ったら、亡くなってしまった。上野さんの分を5年分まとめた文庫『身の下相談にお答えします』を本屋で見つけて、一日で読んだ。

基本的には極めて冷たい。「妻と性交渉を復活したいが嫌がられる」と嘆く59歳の男に対しては、「団塊カップルの多くで、夫のひとりよがりなセックスに妻がうんざりしている」「今はマスターベーションのおかずは世にあふれていますから、ムラムラしたら適度に抜いてさっぱりしてください」

そして最後の言葉がすごい。この質問者に対して「たまには妻に手や口で協力してもらっていいでしょう」としたうえで、「そのくらいのスキンシップが成り立たないようなら、この先、どちらかが要介護になったときに、排泄介助を含む身体介護なんてできませんよ」。ぞくりと来る。

「性欲が強すぎて困ります」という15歳の男子中学生に対しては、「経験豊かな熟女に土下座してでもいいから、やらせてください、とお願いしてみてください。わたしの友人はこれで10回に1回はOKだったと言っています」「私だってもっと若ければ…ただし相手のいやがることは決してしないこと。ご指導に従って十分な経験を積んだら、ほんとうに好きな女の子に、お願いしましょうね。コンドームの準備は忘れずに」

実におもしろくてためになる、まさに名回答。質問の少年はこの教えを実施したのか、思わず想像してしまう。このあたりは第1章の「身の下からわきあがる欲望」にまとめられていて、第2章「家庭の外にあるエロス」、第3章「困った夫、困った職場」と続く。

第2章で、40代で働く既婚女性は夫と関係がなく、恋人もいるが淋しいという相談に対しては、「不倫という言葉はキライなので、婚外恋愛と呼びましょう。/はい、婚外恋愛は孤独です」「その「淋しさ」に耐えられないようなら、婚外恋愛はおやめなさい。婚外恋愛とは、節度のあるおとなだけの特権ですから」「孤独はあなたの人生の彫りを深くします」

締めの言葉は「孤独な魂があいよるこんな関係が8年も続き、これからも続くであろう幸福を、お互いにしみじみと味わってください」。ほとんど文学に近い。第3章以降もおもしろいが、性や恋愛の話が上野さんは抜群にいい。何といっても、25年前に『スカートの下の劇場』で有名になった人だから。今でも私の本棚のどこかにあるはず。

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