« 『フレンチアルプスで起きたこと』のうまさ | トップページ | 外国人旅行者歓迎! »

2015年6月22日 (月)

『カイエ・デュ・シネマ』誌のカンヌ批判

フランスの映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』誌がカンヌ国際映画祭を批判するのは毎度のことだが、最新号はかなり正面から攻撃している。一言で言うと、「総代表のティエリー・フレモーは映画がわからなさ過ぎ」というもの。

社説にあたる冒頭の文章で、編集長のステファヌ・ドゥロルムは、「人食い鬼カンヌ」という題で、徹底批判している。以下、簡単にまとめる。

コンペの19本で評価すべきはトッド・ヘインズとホウ・シャオシェンとナンニ・モレテッィの映画のみで、これは少なすぎ。今回の「失敗」の理由のひとつは、レッド・カーペットで映えるスターを起用した作品がコンペに多いこと。もうひとつは、カンヌ用に作られた作品を入れ過ぎたこと。その分、アピチャッポン・ウィーラセタクンやフィリップ・ガレル、ミゲル・ゴメスの傑作がコンペに入らなかった。

カンヌは人食い鬼というか、世界映画の国際通貨基金のようになって、作家の映画はすべてそこを通過しなければならなくなった。ところが、批評家週間にも監督週間にも全く新しい発見がない。最近の新人の逸材(具体的な監督名を挙げてある)は、ベルリン、ロカルノ、ロッテルダム、サン・セバスチャンなどで見出された。

文章はこう終わる。「今年はソクーロフやベロッキオが、カンヌのコンペに断られてベネチアに行くようだ。もうひとつのカンヌが可能ではないか」

この文章の中でアピチャッポンをコンペに入れなかったことに関して、「ティエリー・フレモーは、もはや自分の趣味にあわないある種の映画に対して妥協をしなくなった」と述べている。これはもちろん、今年から彼の上のジル・ジャコブがピエール・レスキューに変わったために、遠慮がなくなったという意味だ。

それからいくつかの文章が続くが、ヴァンサン・マローザはアジア映画を評した文章で、是枝と河瀬の映画を「不快ではないが、淡いエキゾチズムと満開の桜の花に頼り過ぎている」と書いている。その分、黒沢の映画は絶賛し、ホウ・シャオシェンとアピチャッポンの作品と共に、今年のアジア映画の傑作3本に選んでいる。ジャ・ジャンク―の新作には失望したとも。

もともとフレモーは『カイエ』と敵対する雑誌『ポジティフ』に近かったのでこうした批判もわかるが、是枝の『海街diary』については私も疑問がある(数日中には書く)ので同感。フランスの新聞でもフレモー批判は出ているようなので、トップが変わったこともあり、ひょっとすると交代もあるかもしれない。

|

« 『フレンチアルプスで起きたこと』のうまさ | トップページ | 外国人旅行者歓迎! »

映画」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/61773070

この記事へのトラックバック一覧です: 『カイエ・デュ・シネマ』誌のカンヌ批判:

« 『フレンチアルプスで起きたこと』のうまさ | トップページ | 外国人旅行者歓迎! »