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2015年7月 2日 (木)

『ソ満国境 15歳の夏』の使命感

8月1日公開の松島哲也監督『ソ満国境 15歳の夏』を見た。今年は戦後70年だが、この映画は終戦直後にソ満国境で彷徨った新京第一中学生150人を描く。そればかりか、それを現在の福島の仮設住宅に住む中学3年生たちと結んでいる。

いくらなんでも詰め込み過ぎだろうと思うが、それがかっちりと94分に収まっている。ソ満国境の話は、実際に15歳だった田原和夫氏が当時の記憶をもとに1998年に書いた同名の原作を基にしている。

映画は、中国から招待された現在の福島の中学の放送部5人がロシア国境の街・石岩鎮に行って、67年前の中学生の話を聞いてカメラに収めるというもの。現代の中学生が調査を進めると同時に、終戦直後の場面がフラッシュ・バックで再現されてゆく。

1945年、ソ連国境の報国農場で働く中学生たちが軍から置き去りされる。ソ連の突然の攻撃を受けてちりぢりに逃げるシーンや、親のいる新京(長春)に向けて倒れそうになりながら歩く場面、中国の村人との出会いなどが丁寧に撮られていて、迫力がある。

そして田中泯と夏八木勲(この映画が遺作)という名優ふたりの存在が、この映画の根底を支える。彼らが現代の中学生に話しかけるシーンは、まるで後世への啓示のように神々しい。とりわけ、田中が横顔のアップで67年前のできごとを語り、中学生がそれをカメラに収めるシーンには心を動かされた。

中国ロケもありそれなりに予算もかかった映画だし、チェーンでの拡大公開も可能な気もするが、東京では一館のみの公開という。それはたぶんこの映画が、どこかで今の観客が求めているものとずれているからかもしれない。

ひとつには第二次世界戦争を題材にしている点で、『おかあさんの木』もそうだが、『男たちの大和』のような人気若手俳優を揃えたアクション映画でないと、戦後70年と言ってもなかなか見てくれない。

もうひとつもっと大きいのは、福島原発を題材にしている点だろう。震災直後はともかく、4年もたって原発の映画やドキュメンタリーやテレビ映像がたくさん流れた後では、仮設住宅の描写はもはや「古い」と思われるかもしれない。

さらにいささか説明的な音楽や古い映像のフッテージや写真を使ったわかりやすい展開が、今風ではない。2時間枠のテレビ番組ならば、十分に地上波で流せると思うのだが。

それでも、普通の人が見てきっと涙を流す力作だと思う。ふたりの名優のシーンだけでも一見の価値がある。

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