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2015年7月20日 (月)

『沖縄 うりずんの雨』の歴史意識

ジャン・ユンカーマン監督の『沖縄 うりずんの雨』を劇場で見た。昨年沖縄に初めて行って以来、自分が沖縄についてあまりに無知なのに気がついたので、機会があれば何でも見る。ようやく正式公開になった三上智恵監督の『戦場ぬ止み』(いくさばぬとぅどぅみ)と好対照の映画だった。

『戦場ぬ止み』は、辺野古移転問題に焦点を合わせて、そこで反対運動を繰り広げる人々の日常を追う。ほとんど同居するように現場に寄り添って、人物たちの表情や心の揺れを克明に写しだす。小川伸介や土本典昭に近い手法だ。

しかし、ジャン・ユンカーマンの映画は、戦う人々はほとんど見せない。そこにあるのは沖縄という場所がいかに差別されてきたかという冷静な分析であり、歴史的意識である。だから『戦場ぬ止み』のように見ていて興奮することはないが、見終わるとずしりと来る。

映画は「沖縄戦」「占領」「凌辱」「明日へ」の4部に分かれている。「沖縄戦」では冒頭に1853年のペリー来航まで遡る。それから約90年後に沖縄はアメリカ軍に対する日本の防波堤となって、沖縄戦が繰り広げられる。沖縄を占領した米軍は本土攻撃のための基地を作るが、それが戦後も基地として残る。

そして1972年まで「占領」が続き、基地のための土地収容に始まって、アメリカ兵による婦女暴行などの事件が起こる。そして今も辺野古移転を巡って、日本政府は沖縄の人々の意見を聞かない。

これらを述べるのに、沖縄で戦った元兵士たちや防空壕に閉じこもった女性たちのインタビューが出てくる。おもしろいのは、当時沖縄で戦った元米兵や戦後沖縄に駐留したアメリカ人が出てくることだ。さらに沖縄戦を撮影したアメリカ側の映像がふんだんに使われているのもアメリカ人監督ならでは。

一番驚いたのは、1995年に12歳の少女を暴行した元アメリカ兵のインタビューが出てきたこと。3人の犯人は刑務所に入った後に出所しており、1人は自殺、1人は取材拒否だが、1人が当時のことを後悔を込めて語っていた。

あるアメリカ人の女性教授が、沖縄におけるアメリカ兵の心理を分析していたが、それを聞いていると兵士たちの行動がある程度理解できるようにすらなる。だからこの映画は誰かを攻撃するよりも、人間存在そのものの闇の部分に向かう。

映画の観客としては『戦場ぬ止み』の方がずっとおもしろかったけれど、こちらも重要な映画だと思う。例えばアメリカ人が見るとしたら、こちらの方がずっと理解しやすいのではないか。

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