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2015年7月13日 (月)

フランスの日本映画

私がパリにいた1980年代半ばは、日本映画の新作といえば、大島渚と今村昌平くらいだった。映画好きのフランス人が見ていたのは、『戦場のメリークリスマス』と『楢山節考』。それがいつの間に北野武や是枝裕和になったのか。それを知りたくて、日仏会館にファブリス・アルデュイニさんの講演を聞きに行った。

日仏会館は恵比寿にあって、飯田橋の日仏学院がフランス語教育とイベント中心なのに比べると、日仏の学者が集う場所といった感じか。いつも渋いシンポジウムなどを企画している。

今回の講師のファブリスさんは、パリの日本文化会館の映画主任で日本語は完璧。前に早大関連の研究会で講師として来てもらったこともあった。1996年にパリの日本文化会館ができた時に公募で採用されて、20年近く日本映画の紹介をしているという。以下は彼の話。

現代の日本映画の監督が知られるようになったのは、1997年あたりからだという。カンヌで今村昌平の『うなぎ』がパルム・ドール、河瀬直美が『萌の朱雀』でカメラドール(新人賞)、ベネチアで北野武の『HANA-BI』が金獅子賞を取ったのが大きかった。加えて翌年9月に黒澤明の逝去が大きく報じられ、日本映画の世代交代を象徴づけた。

今のフランスでコンスタントに公開されるのは、北野武、河瀬直美、是枝裕和、黒沢清の4人。ファブリスさんは彼らに共通する特徴を、「空白」l'absenceという言葉で表した。人間の内面の空白を、静かな映像に定着させるという点で、この4人は実はよく似ている。

従って、北野武の『アウトレイジ』は評判が悪かった。この映画にはいわば「言葉の暴力」のおもしろさがあるが、これはフランス人には伝わらなかった。この4人の監督は、例えば大島や今村に比べて社会性が希薄である。そんなところに忽然と現れた冨田克也監督の『サウダージ』は、日本映画で久しぶりの社会派映画で話題になった。

だいたいそんな内容だったが、それ以外に旧作の上映やDVD販売も盛んだという。それを推進したのはALIVEという会社のジャン=ピエール・ジャクソンで、彼は90年代から鈴木清順や森一生、三隅研次などこれまで知られていなかったB級的な映画を次々と公開した。ちなみにフランスでは文化的価値の高いDVDを出すと、政府から補助金が出るらしい。最近出た黒澤明のブルーレイボックスは、1500万円の助成金が降りたというからビックリ。

それにしても、もっとほかの監督が知られてもいいのにと思う。アート系で今年見た映画だと、『0.5ミリ』の安藤桃子とか『トイレのピエタ』の松永大志とか『ローリング』の冨永昌敬とか、『味園ユニバース』の山下敦弘とか行けると思うが。

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