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2015年7月 6日 (月)

『ラブ&ピース』は久々の当たり

園子温は長年マイナーな監督だったのに、数年前から突然映画を量産し始めた。しかし同じ多作な監督でも、どの作品もあるレベル以上に仕上げる三池崇史と違って、出来不出来にかなり差がある。『ラブ&ピース』は「毎日新聞」に高橋諭治さんが「ここ数年における園子温のベスト!」と書いていたので、劇場に見に行った。

出だしは、「なんだこれ」だった。田原総一郎司会のテレビ番組に宮台真司らが実名で現れて、「鈴木良一」なる人物をけなし始める。それを長谷川博己演じる鈴木がテレビで見ているというもので、全くおかしくない。

さらに鈴木が会社で苛められている日々を自虐的に描く。これもあまりに単調。さらに彼が買った亀がトイレから流されて下水道に行き、そこで捨てられたおもちゃや動物に出会うという展開に唖然とした。

ところが、そこからおもしろくなる。おもちゃたちはアニメのように動きだし、西田敏行演じる「おじいさん」が捨てられたおもちゃや動物と会話をする。亀は鈴木の願望を吸い込むように大きくなり、鈴木がロック歌手としてデビューするように手伝う。

何とも荒唐無稽なファンタジーだけれど、鈴木がバンドに加わって最初に歌い出すシーンには大きなカタルシスがある。そのうえ、歌の内容も現在の体制批判でカッコいい。鈴木は「リョウ」という名前でどんどん有名になり、亀は巨大になってゴジラのように東京の街に現れる。

この奇想天外な脚本は、園子温が25年前に書いたものだという。そのせいか、青春の夢や社会への反発と同時に子供のような幻想が詰まっていて、不思議な混淆の世界を作り出している。ラストで忌野清志郎の歌が流れると本当に泣けてくるが、もともとこの主役はかつて忌野にオファーして断られたらしい。

「ピカドン」という歌が「ラブ&ピース」に変わったように、前半の反社会的な感じが後半はファンタジックなサクセス・ストーリーになってゆくのは残念だけど、一風変わった青春映画としてなかなかの出来だと思う。巨大な亀がCGでなく特撮だったのがいい感じのユルさを出していたし、鈴木が憧れる同僚の女性を演じる麻生久美子が、最後までダサいままだったのも良かった。

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コメント

あのタイミングのスローバラードはずるいですよね。

投稿: さかた | 2015年7月 7日 (火) 09時28分

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29日のことですが、映画「ラブピース」を鑑賞しました。 ロックミュージシャンの夢に破れ、パっとしない日々を送る鈴木はある日 一匹のミドリガメと運命的なものを感じピカドンと名付ける しかし会社の同僚に笑われてトイレに流してしまう。後悔する鈴木だが 下水道...... [続きを読む]

受信: 2015年7月16日 (木) 22時09分

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