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2015年7月28日 (火)

『ルンタ』でチベットを考える

『ルンタ』と言えば、私にとってはフランスの馬を使う劇団「ジンガロ」が10年前に来日した時の公演タイトルだった。チベットの僧侶が参加したもので、私が見た演劇では最高の1つ。それが「風の馬」を意味することは、当時知っていただろうか。

そんなことを考えたのは、池谷薫監督の同名のドキュメンタリー映画を見たからだ。この中で「風の馬」が説明される。確かに後半の広大な草原を走る馬の映像を見ていると、それがチベットの象徴であることがよくわかる。

映画は中原一博という日本人の毎日を追う。彼は何十年もチベット亡命政府の専属建築家としてインドのダラムサラムに住んで、最近はチベットの焼身自殺をネット上で日本語で報告を続けている。後半は、チベットに行って、焼身自殺の場所を訪ね歩く。

チベットについての映画だけれど、それ以上にチベットに憑りつかれた日本人の話である。彼の目を通してチベットが見えてくる。彼はチベット語で地元の人々と話し、自分でそれを日本語に直す。すべてが彼のフィルターを通しているから、どこか隔靴掻痒な気分になる。

それにしてもわからない。なぜ173人もの焼身自殺があったのか。10代や20代も多いが、それぞれが個人で決断しているようだ。チベットの人々がダライ・ラマを絶対視しているのも、正直に言うとわからない。なぜ中国政府がそれほど弾圧するのかも、実はわからない。そもそも中原氏がなぜそんなに長くチベットに暮らし、彼らを愛しているのかもわからない。

映画を見ると、ある意味ではそれらがもっとわからなくなる。それでも、後半で中原氏がチベットに行った時に見る光景はすばらしい。風の中を馬で駆け巡る放牧民たち。その輝くような笑顔。祈りの文字が描かれたさまざまな色の旗が揺れる。時には天を舞う。

見終わると、わからないながらも、焼身自殺をした人々の気持ちを考えようと思う。あるいは中原さんの心情を察してみようと思う。それが他人を思いやる心から来ているのは間違いないから。

公開して10日もなるのに、平日の昼間の劇場は満員だった。日本にチベットファンや支持者は多いのだろうか。やはりわからない。

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