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2015年7月13日 (月)

「これからの美術館事典」展をどう見るか

竹橋の東京国立近代美術館で9月13日まで開催の「これからの美術館事典」展が何とも興味深かった。「国立美術館コレクションによる展覧会」が副題で、「NO MUSEUM, NO LIFE」がキャッチコピー。ここでも書いた最近の東近美らしいスノッブなものかと思ったが、そうでもなかった。

「国立美術館」とは、10年ほど前に指定された独立行政法人で、東近美以外に、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館を指す。新美はコレクションはないから、実質的には4館から170点の所蔵作品を集めて、美術館とは何かを考えるというもの。

会場に入ると、Aと書かれていて、「Art Museum美術館」、「Archiveアーカイヴ」、「Artistアーティスト」などの言葉の解説パネルがある。内容もずいぶん理屈っぽい。説明も引用もせずにいきなりベンヤミンの「礼拝的価値」や「展示的価値」という言葉を使っても、普通の人はわからないのではと心配になる。

あるいは「Education教育」のパネルで美術館教育を説明するのに、「「規律=訓練としての教育」(ミシェル・フーコー)」などと書くのは衒学以外の何ものではないだろう。やはり東近美はふざけていると思い始めたが、展示を見ているとだんだんおもしろくなる。

「Frame額/枠」で、額のみを何重にも展示し、真ん中が空いていて壁の向こうの観客が見えた時はドキッとした。あるいは「Hanging吊ること」で吊ったクロード・ヴィアラの布が揺れていたり、展示用の金具を展示したり、展示作業風景のビデオを見せたり。

「Light光/照明」のコーナーでは、LEDを使った繊細な照明でモネやルノワールの傑作を見せたり、真っ白い壁に四角に切り取った照明だけを見せたり。「Naked/Nude裸体/ヌード」の項では、あえてキャプションなしで古今東西さまざまな裸の絵を天井までみっちり並べて、キャプションは別の場所にまとめてあった。うーん、おもしろい。

後半の「Storage収蔵庫」は、4館に作品がある藤田嗣治を例にとって、どのような状態で保存されているか実物大の写真を見せて、そこに実物の絵画を並べていた。そして展覧会は、「Youあなた」、「Zeroゼロ」で終わる。そこには、今回の運搬用の木箱が積み重なっていた。輸送のカトーレックのロゴと共に。

あちこちの展示壁に穴をあけた展示デザインも秀逸だし、チラシ、チケット、展示案内図などもセンスがいい。自分が長年展覧会をやっていたから面白かった部分もあるが、そうでなくても一見の価値はあると思う。美術館や展覧会という制度自体を考えさせられるから。

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