« 舟越保武の静謐さ | トップページ | 『螺旋銀河』の奇妙な魅力 »

2015年7月17日 (金)

トロント映画祭にコンペが

一昨日、映画関係者と話していたら、「トロント国際映画祭にコンペができるという話があったが、どうなったかなあ」と言う。へえー、と思っていたらその日の夜にトロントの映画祭事務局からリリースが来ていた。今年から「プラットフォーム」という名のコンペを作るという。

これはトロントが今年40周年を記念して創設するもので、芸術的な野心の強い作品12本を集めるという。審査員はジャ・ジャンクー、クレール・ドゥニ、アニエスカ・ホランドの3人で、そもそも「プラットフォーム」という名前はジャ・ジャンクーの作品から取られている。

これは実は大変なニュースではないか。もともとトロントは、コンペのない、市民のための映画祭として知られてきた。1975年にできてからかなり長い間「映画祭の映画祭」と称して、欧州の映画祭で上映された秀作を見せる場として機能してきた。

ところが今世紀に入ってから専用会場もでき、欧州の映画が北米での公開を目指すマーケット機能も充実してきた。一方で時期が半分重なるベネチアは、リーマンショックなどで北米からの参加者が激減していた。ここ数年は欧州の映画セールス会社も、ベネチアよりもトロントを重視したので、日本の配給会社もベネチアからトロントに行くようになった。今ではアカデミー賞の前哨戦と言われるまでに大きくなり、観客数も50万人に近いという。

それでも昨年まではコンペもなく、「観客賞」が一番の賞だった。だから芸術的名誉はベネチアへ、ビジネスはトロントへという住み分けができていた。ところがトロントにコンペができると、ベネチアに出そうと思う若手は、トロントに流れる可能性が出てくる。とりあえずはベネチアのコンペは揺るがないだろうが、革新的作品を集める「オリゾンティ」部門は影響を免れないだろう。

その影響はトロントの後のサン・セバスチャン、プサン、東京にまで及ぶだろう。ベネチアにもれたワールド・プレミア(世界初上映)の若手の新作を落穂拾いのように探していたこれらの映画祭にとって、「プラットフォーム」の12本は大きい。

前述の映画関係者によれば、東京国際映画祭にも打診があったが「どうぞ」と返事をしたらしい。ところがベネチアやサン・セバスチャンは大反対だったらしい。そこで配慮を効かせて「芸術的な野心」を持つ12本という形のミニコンペにしたのではないか。

一般の映画ファンにとってはどうでもいいコアな話だが、10月後半の東京国際映画祭がさらに難しくなるのは間違いない。それにしても、ジャ・ジャンクーの作品名からコンペ名を取るなんて何ともカッコいいし、審査員3名も女性が2名でいい感じ。考えてみたら、『プラットフォーム』はほとんど日本の資本でできた映画だっだのだが。

|

« 舟越保武の静謐さ | トップページ | 『螺旋銀河』の奇妙な魅力 »

映画」カテゴリの記事

コメント

トロントのコンペはプレミア上映が条件でないので、東京に影響はないのでは?
ただ上映作品は重複するでしょうね。
ワールドプレミアに拘っているベネチアには影響があると思いますが。
しかし秋の映画祭ラッシュは、どこもプレミア上映というステータスに拘りすぎて
お互いに潰しあいをやってるかんじですね。
プレミア上映なんて映画の質そのものには何の関係もないのに。

投稿: Dr.Strangelove | 2015年7月17日 (金) 18時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/61899451

この記事へのトラックバック一覧です: トロント映画祭にコンペが:

« 舟越保武の静謐さ | トップページ | 『螺旋銀河』の奇妙な魅力 »