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2015年8月 6日 (木)

差別をめぐる邦画2本

毎年、私のゼミの3年生は12月に映画祭を企画する。もう4年もやっているが、5年目の今年のテーマは「日本のマイノリティ」。例年と同じく、これに決まるまでは二転三転したが、ようやく決まった。最近は、作品を選ぶために、学生と映画を見ている。

「日本のマイノリティ」は、ひらたく言えば「日本の差別」。在日韓国人、アイヌ、沖縄、ハンセン病、被差別部落などが伝統的に挙げられるが、今回成瀬巳喜男監督の『コタンの口笛』(1959)と『橋のない川』第一部(69)、第二部(70)を見た。

『コタンの口笛』は、ビデオもDVDも出ていない。もともと成瀬巳喜男の戦後の東宝作品はソフト化されていないものが多く、これもその1本。今回はフィルムセンターの大学との連携事業ということで、特別試写をしてもらった。

一般に評判が良くないのは知っていた。例えば『映画読本 成瀬巳喜男』にはこう書かれている。「東京人成瀬巳喜男にとっては異質な環境であり、虐げられた人々への共感はあっても、彼ならではの内面的な充実感は薄い。誠実だが、物語を超える密度を書く」

見てみると、かなりおもしろかった。久しぶりに成瀬をスクリーンで見たこともあって、この監督特有の情感の広がりをたっぷり感じた。長女マサ(幸田良子)が従姉や弟や先生と道をとぼとぼと歩き、音楽が流れるだけで、何ともいえない寂しさや哀しさが画面を覆い尽くす。

そしてカラーが何とも鮮烈だ。マサの赤いセーターや赤いスカートが夏の北海道によく映える。そして川の青さはまるで絵具でも流したように強烈。そこにアイヌの人々の「濃い」顔がくっきりと目立つ。

物語自体は母を亡くしたアイヌの姉弟を中心に、父親(森雅之)や祖母、先生たちとの日々を描いたもの。学校でいじめられたり、父親の仕事(何と米軍基地!)がなくなったり、好きな美術の先生(宝田明)が東京に出て行ったり、祖母が亡くなったりと不幸ばかりが続くが、それでも生きてゆくというもので、これまた成瀬らしい。

あえてほかの成瀬と違うのは、男女の恋愛が中心にないことか。その分を、アイヌの人々同士の互いを思い合う気持ちが補う。その溢れる情感は忘れがたい。

『橋のない川』は今井正監督作品。私はこの監督や山本薩夫、家城巳代治といった独立プロ系の監督が若い頃は苦手だったが、今回この映画を見たらずいぶんおもしろかった。とりわけ第1部が良かった。考えてみたらこの映画も中心になるのは子供たちで、不幸の連続。この映画についてくわしくは後日。

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