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2015年8月 2日 (日)

またまた都現美の話

昨日の「朝日」によれば、東京都現代美術館で開催中の「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展の会田誠一家の作品が、改変や撤去をされないことが決まったという。会田誠の全面勝利だが、何だか嫌な後味が残った。

美術館側はこの事件が起きてから、一度も公の場で経緯を説明していない。会見どころかコメントさえもない。会田誠がツイッターやTumblrで経緯を書いてから話題になった。それを高橋源一郎や茂木健一郎などの著名文化人がツイッターでどんどん応援した。

それでも美術館側はだんまりを決め込んだ。そして31日に会田氏に「改変はしない」と伝えたことだけが報道や会田氏のツイッターで流れた。美術館側はまるで何もなかったかのように、黙って時の過ぎるのを待っているようだ。

今回の事件は、おそらく1986年の大浦信行作品をめぐる「富山県立近代美術館問題」のように日本の美術史に残る汚点となるだろう。もともと素人の館長や副館長ではなく、何十年も学芸員をやってきたチーフキュレーターの長谷川祐子氏が、改変や撤去の要請をしたわけだから。

それも「富山問題」のように「皇室関係」でも、会田氏自身が3年前に森美術館で起こしたような「児童ポルノ関係」でもない。文科省や首相という「権力」を風刺しただけである。おそらく館長や都の幹部が不快感を伝えたのだろうが、長谷川氏はそれに同意して作家に伝えた。まさに「美術館は死んだ」といえよう。

ところで私はきっと27日の休館日に撤去されると早合点して、28日にもう一度見に行った。しばらくして驚いたのは、会場に会田氏がのこのこと現れて作品を作り始めたことだ。声を掛けると「自分でもよくわからないんですよ」と苦笑いした。このふてぶてしさは強い、と思った。

改変の対象となった2作品以外でも、妻の岡田裕子の「愛情弁当」や「悩める女子の体操」など10を超す映像を中心に、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しい展示で、子供たちは盛り上がっていた。4組の現代美術家に依頼した展示だが、ヨーガンレールもかなりよかったので、子供向けの展覧会としてはずいぶんレベルが高い。

もうひとつ。同時開催の「オスカー・ニーマイヤー展」がすばらしかった。会場構成はSANAAということもあって、優美な建築が引き立つ。とりわけ地下の吹き抜けを使ったイブラプエラ公園の縮小再現は、中に足を入れることができて、89年にサンパウロ・ビエンナーレで毎日通ったことを思い出した。

「きかんしゃトーマスとなかまたち」展は、私には全く意味がわからない。しかし3本もの企画展を同時開催し、常設も2フロアーでこれだけの充実ぶりはなかなか。だからこそ、今回の事件の対応は悔やまれる。

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