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2015年8月 3日 (月)

もっと見たい蔡國強

横浜美術館で10月18日まで開催中の「蔡國強展:帰去来」を見た。この作家は京都の「PARASOPHIA」でも一番おもしろかったので、楽しみにしていた。その期待にたがわず充実した展示だったが、正直なところもっと見たいと思った。

今回の目玉は、チラシなどの表紙にもなっている「壁撞き」。99体のオオカミが走り、宙を舞い、地に落ちる様子を立体で表現した大きな展示で、30メートルを超す。まさにスペクタクルな見せ物だが、じっと見ていると生命に対する深い思考に誘われる。

何だか地球の運命を見ているような気分にさえなってくる。数多くのオオカミのはく製を展示することは誰でも思いつきそうだが、それが蔡さんの手になるとなぜか宇宙的次元を帯びてくる。

そのほか、入り口には春画をモチーフにした《人生四季》の4点があって、ちょっとびっくりした。彼の作品に性の要素が出てきたのは初めてではないか。それから《春夏秋冬》は磁器タイルで作られた草花の上に、花火をつけて焦がしたものだが、何とも美しい。

《朝顔》は、陶で作られた朝顔を蔓で天井から吊るしたもの。そのほかには、入り口ホールに、今回横浜で作られた《夜桜》。これはたぶん横山大観の《夜桜》をモチーフに描いた絵に、花火をつけて焦がしたもの。

どれも大きいし、それ以上に壮大な構想力を感じるので、見応えがある。その分作品数が少ないので、物足らなかった。美術館での個展なので、常設展の半分をつぶしてこれまでの作品も見せて欲しかった。

いくつかのビデオも興味深かったが、「蔡國強:巻戻」というのが良かった。彼の活躍を2015年から幼少期まで遡って見せるもので、最近の世界的な活躍が一目でわかると同時に、1986年に来日した時の映像がおもしろかった。髪が長くていかにも中国の苦学生という感じで、普通の風景画を描いている。「日本には3000のギャラリーがあるので、自分の絵は売れるだろうと思ったが、そうではなかった」というコメントが入る。

彼が1990年代前半に少しずつ有名になっていった頃は覚えている。まだバブルの余韻があった頃の、四谷のP3や世田谷美術館での個展は記憶にある。そして彼は1995年にニューヨークに行き、そして世界的にどんどん有名になった。日本を経由して世界に羽ばたいた外国人の美術家としては、ナム・ジュンパイク以来ではないか。

その意味では、今回の「帰去来」という副題も味わい深い。オオカミの展示を見ても、この言葉は当てはまる気がするし。この夏、必見の展覧会。

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