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2015年8月 7日 (金)

今度のアサイヤスは?

オリヴィエ・アサイヤスというフランスの監督は、映像の才能に溢れているのは明らかだが、わかりやすい映画とわかりにくい映画をほぼ交互に作る。わかりやすいのは、『冷たい水』(1994)、『感傷的な運命』(2000)、『夏時間の庭』(08)、『カルロス』(10)など。

わかりにくいのは、『イルマ・ヴェップ』(96)、『デーモンラヴァー』(02)、『クリーン』(04)、『レディ・アサシン』(07)など。偶然だが、どうもカタカナの邦題の時が難解なようだ。それで言うと10月24日公開の新作『アクトレス』(14)は後者かもしれないが、そうとも言えない。

主演はジュリエット・ビノッシュで大女優という設定。彼女は20年前の出世作のリメイクをオファーされるが、その役はかつて自分が演じた主人公シグリットの上司役だった。彼女は、アシスタント役のクリステン・スチュワート、新たにシグリットを演じるクロエ・グレース・モレッツと愛と嫉妬に満ちた心理劇を展開する。

舞台は、スイスのシリス・マリア(これが原題)という山と湖に囲まれた絶景の地。かつてお世話になった劇作家の授賞式に赴くビノッシュは、限りなく優雅に「大女優」を演じる。劇作家の突然の死や苦手だった俳優の登場などがあっても、見事にそつなくその場をこなす。

そこで若い演出家からのオファーを受けて、その地でアシスタントを相手にリハーサルを始める。するとビノッシュはどんどん男性的になって、まるでクリステン・スチュワートを愛しているかのよう。それから後半になって、クロエ・グレース・モレッツが登場すると、さらに彼女は変貌する。

40歳を過ぎた有名女優が、絶えず過去を振り返りながらも前向きに生きてゆく姿がいい。愛憎が渦巻く毎日だが、スイスの自然を見ながら毎日を過ごす。そこで『マローヤの雲の現象』(24)というアーノルド・ファンクのサイレント映画が使われているのもうまい。女優が過去を覗くような感じにぴったり。

最初から最後まで女性の映画なのでいまひとつ私にはピンとこなかったが、十分にその映像を楽しんだ。たぶん40歳過ぎの女性の評判はいいのでは。よく考えたらビノッシュそのものが私はどこか苦手だった。『ランデヴー』(85)で初主演をした時にパリにいたが、後に著名な評論家になるCさんが、「ソフィー・マルソーをちょっと壊したみたいな顔」と言ったので大笑いしたのを覚えている。

ところで、プレス資料でファンクに関する記述に間違いが多かったので、宣伝の方に指摘した。日本初の国際合作で原節子主演の『新しき土』さえも言及されていなかったので。

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