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2015年8月13日 (木)

『天皇と軍隊』のまっとうさ

2009年にフランスのテレビが製作した『天皇と軍隊』をようやく劇場で見た。少し前から話題になっていたが、1週間の限定上映と聞いて調べたら、ネットでの予約制という。満員の日もあったが、とにかくぴあで予約してセブン・イレブンで発券した。

最近はドキュメンタリーを好んで見ていることもあるが、今回は監督の渡辺謙一さんに昔パリで何度か会っていたことが理由だった。フランス製作ならば、かなり自由にやっているのではないかとの期待もあった。

その期待はいい意味で裏切られた。実にオーソドックスなまっとうな映画だった。終戦の天皇のラジオ放送に始まって、マッカーサーの到着から新憲法と東京裁判へ。そこで天皇制がなぜ温存されたかをたっぷり語る。それから朝鮮戦争と警察予備隊から講和条約、そして安保条約。

それから時間は飛んで、三島由紀夫の自殺から靖国問題へ。それから慰安婦問題で、カメラはソウルへ。最後は憲法改正問題。

インタビューに答えるのは、田英夫や樋口陽一のような護憲派もいるし、ジョン・ダワーのような冷静な歴史家も、五百旗頭真のような保守の学者も鈴木邦夫のような新右翼もいる。いずれもきちんと考える人間ばかりが、天皇と軍隊をめぐって異なる意見を述べるところに、問題の難しさが露呈する。

インタビューで一番おもしろかったのは、新憲法草案に参加したベアテ・シロタ・ゴードンの話。東京で焼け残った図書館を探すと3館があったので、そこから10カ国の憲法をかき集めて、ジープで持ち帰った。1週間でみんなでその憲法を研究して、「世界中の英知の結晶」として憲法を作ったという。

ジョン・ダワーは象徴天皇制を規定した第1条の条件として戦争放棄の第9条があったと解説する。そして第9条が画面に出てきて声で読まれた時、私は思わず涙した。なぜかわからない。

天皇が出てくるいくつかのシーンも心を打たれた。一番驚いたのは、「人間宣言」後の全国行脚の時に広島で、天皇を数万人が万歳で迎えるシーン。奥には原爆ドームが写っていた。あるいは彼が1975年の初めての公式記者会見で原爆についてこう答えた時。「遺憾には思っていますが、こういう戦争中であることですから、広島市民に対しては気の毒であるが、やむをえないことと私は思っています」。ううむ。

6年前の作品だが、ぜひ日本のテレビで上映して欲しいと思う。安保法案の今、見るべき映画だから。劇場の方は、東中野は14日までもう満員で、その後は横浜での上映という。

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