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2015年9月14日 (月)

日本映画の出ないベネチア:その(9)

昨晩帰国したが、ベネチアの受賞結果を見た人は、このブログで触れていない映画が多いと思ったかもしれない。実際は見ているが、どう書くか迷っているうちに結果が先に出たというところ。金獅子賞の「遠くから」Desde allaは、ベネズエラのロレンソ・ビガスの第一回長編。

中年の裕福な男アルマンドは、お金で少年を自宅に連れ込み、裸を眺めることを趣味にしていた。ある時声をかけたエルダーとの間に奇妙な友情が生まれる。ちょっと不思議なタッチの映画だが、人物の描き方がリアルで説得力があったし、どう展開するか全く見えず、予想外の方向へ行く快感があった。

銀獅子(監督)賞はここに書いたアルゼンチン映画の「一族」。こう来ると審査委員長のアルフォンソ・キュアロンがメキシコ出身なので中南米を贔屓したと考えたくなるが、もともと今年は中南米映画が多い。批評家週間などを除いた正式セクションの長編で、ブラジルが2本、アルゼンチンが2本、メキシコが2本、ベネズエラが1本。日本は1本もないのに。

審査員大賞の「アノマリサ」はAnomalisaはチャーリー・カフマンとデューク・ジョンソンの共同監督による異色アニメ。主人公のマイケル・ストーンは顧客満足の理論でベストセラーを書く作家で、講演旅行でリサと出会う。出てくる人物はすべてずんぐりとして醜く、おまけに顔にはヒビがある。主人公以外は男女とも同じ男の声で、リサだけが女性の声。

人間やその社会が醜い存在であることを、これほど皮肉たっぷりに描いたアニメは見たことがない。私にとっては、ソクーロフやベロッキオと並んで強烈な1本だった。

ヴァレリア・ゴリーノが主演女優賞を撮った「あなたたちへの愛のために」Per Amor vostroは、ゴリーノ演じるアンナが映画の現場で働きながら、ダメな夫と彼女が好きな俳優との間で揺れつつ、子供を育てる話。ジュゼッペ・ガウディーノという監督で、若手らしいミュージック・ビデオのような映像処理が多くて引いてしまったが、ゴリーノは確かに良かった。

ファブリス・ルキーニが主演男優賞で脚本賞も取ったフランスの「レルミーヌ」や審査賞のトルコ映画「狂乱」についてはもう言及済み。受賞結果を一言で言うと、ベテランではなく若手のフレッシュな表現を重視したというところか。

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