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2015年9月 8日 (火)

日本映画の出ないベネチア:その(4)

ハイレベルながらもわかりやすいコンペ作品を2本見た。イギリスのトム・フーパー監督の「デンマークの女」The Danish girlとフランスのクリスチャン・ヴァンサン監督の「レルミーヌ」L'hermine。レルミーヌは、裁判長用の特別な衣装を指すらしい。

「デンマークの女」は1920年代のコペンハーゲンの画家志望の若い夫婦を描く。女性を描くために夫アイナー(エディ・レッドメイン)を女装させていた妻のゲルダ(アルシア・ヴィキャンデル)は、ある時夫がひとりで女装を楽しんでいる姿を見る。

アイナーの女装はエスカレートし、自らをリリと名乗って女装で外出を始める。夫の女装の姿を描いた絵が売れ出したゲルダは、夫とパリに移り住む。夫の女装癖は医者の治療を受けても治らず、自ら性転換手術を希望して、ドイツのドレスデンに行く。

この映画がおもしろいのは、女になりたいと思うアイナーの気持ちが高まるにつれて、世間の目は冷たくなるが、妻は一貫して夫を愛し続けることだ。それはアイナーも変わらない。リリへの変身はテンポよくコミカルに描かれているが、その奥に大きな勇気と悲しみが横たわっている。

現代にも通じるテーマだし、エディ・レドメインの変身がホーキング博士の時以上に話題を呼びそうなので、おそらくアカデミー賞へ向けて突っ走るだろう。ユニバーサルなので、日本配給は東宝東和。

「レルミーヌ」はパリ郊外のサン・トゥアン市の地方裁判長ラシーヌの数日を描く。ラシーヌはインフルエンザに罹っているが、無理して法廷に出る。生後7か月の娘を殺した容疑の父親の裁判だが、その陪審員の中に6年前に入院した時に好きになった女性を見つける。裁判の後に毎日ラシーヌは彼女とカフェで落ち合う。

それだけの話なのだが、裁判の細部が何ともドラマチックで、目が釘付けになる。ラシーヌを演じるファブリス・ルキーニが何とも愛すべき裁判長を演じていて、見ていて楽しい。この俳優は、ちょっと間抜けでお茶目なインテリを演じたら抜群だ。陪審員たちの庶民の姿もまるでドキュメンタリーのようにリアル。内容は地味だし、スターも出ていないが秀作なので日本でも公開して欲しい。

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