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2015年9月22日 (火)

ニキ展に考える

帰国して初めて見た展覧会は、国立新美術館で12月14日まで開催の「ニキ・ド・サンファル展」。あちこちに野外彫刻があるので名前はもちろん知っていたが、まとめてその作品を見たことがなかった。

ニキと言えば、私にとってはパリのポンピドゥ・センターの横にある「ストラヴィンスキーの泉」。池の中でいくつものおもちゃが動くもので、彼女とパートナーのジャン・ティンゲリの共作として知られている。ティンゲリの方は、いくつも作品を見ていたので、何となく同じような作風かと思っていたら大違い。

ティンゲリが作る動く彫刻は、現代の不条理な世界を表現しているが、ニキにはまず動くものはない。初期のアクションペインティングのような絵画にしても、後半の極彩色の彫刻にしても、女性らしさを前面に押し出して躍動感に溢れている。

実を言うと、一番驚いたのは、彼女がスター並みに美人であること。カンバスに絵具を入れた缶を仕込み、そこに銃を撃って絵具を流すパフォーマンスを撮った1960年代前半の映像があるが、最初に見た時はジャンヌ・モローかと思った。真っ白の衣装に身を包んで銃を撃つさまは、本当にカッコいい。

それからだんだんと女性の性や子供などを取り込んだフェミニズム的な作品が増えてゆく。また70年代の映像があってインタビューに答えて女性がいかに抑圧されてきたかを語っているが、これまた美しい。

「ナナ」シリーズに代表される、派手な服を着て太った陽気な女たちの彫刻には、人生を謳歌するような明るさがある。同じフェミニズム的なアートでも、草間弥生のネガティブな、神経症的な感じとはだいぶ違う。

それはニキが美人だったからだろうなどと考えるのは、全く男性中心のマッチョな考えであることは重々わかっているが、わざわざ彼女本人の映像がいくつも展覧会のなかにあると、そう思わせられる。

彼女は1998年にイタリアのトスカーナ地方に「タロット・ガーデン」という野外彫刻公園を作っている。彼女の彫刻ばかりでなる公園で20年をかけて作ったそうだが、彼女の方針で一切観光ガイドに載っていないらしい。この映像も会場にあった。

2002年に亡くなっているが、自分の名前の公園まで作って何だか幸せそうな人生に見えたのは、やはり「美人」という先入観からか。ちなみにタロット・ガーデンはネットで調べると、個人ブログがいくつか出て来るので、行き方はすぐにわかる。ネットは、あらゆる神秘や禁止を白日のもとにさらしだす。

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コメント

射撃の映像での彼女はとても美しかったですね。一通り打ち終わって、何か微笑んでいるかのような顔を浮かべる彼女もミステリアスで良かったです。

投稿: さかた | 2015年10月20日 (火) 01時51分

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