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2015年9月26日 (土)

『赤い玉、』がおもしろい

高橋伴明監督の久々のエロス作品『赤い玉、』を劇場で見て、個人的にはずいぶんおもしろかった。「個人的には」と書いたのは、普通の若い人が見てもつまらないかもしれないと思うから。主演は奥田瑛二だが、まるで高橋監督の毎日が再現されているようで、とにかくセリフがおかしい。

高橋監督は3年ほど前に学生の映画祭でトークをしてもらった時に会った。京都造形大学の教授で、「新幹線で毎週通ってます」と苦笑いをしていた。

この映画の中で奥田瑛二演じる時田は、映画監督だが最近はヒットがなく、京都の大学の映画学科で教授として教えている。場所もどう見ても京都造形大のあたり。そのうえ、新幹線で東京から来てホテルに泊まるという設定。

しかし、実際は時田は大学の事務の35歳の女性・唯(不二子)の家に入り浸っている。授業のシーンの後に、ふたりがお風呂に入っている場面があるが、そのリアルさに息を飲んだ。時田はその毎日をシナリオにしようと原稿用紙を埋め、唯がワープロに打つ。

妙に残るセリフがいくつもあって、私はクスクス笑いながら見ていた。

たまった試写状をどさりと捨てる時田に驚く事務職員に、「映画はタダで見ちゃいかんよね」

自分に迫ってくる女子大生に「70年代ならいたけどな、そういう女優」。その女子大生は時田のことを元カレに「もう賞味期限が切れてる。大学に来る時点で終わっている」と言う。その男が時田に助監督にしてくれと頼むと「売れ筋の監督のところに行け」

時田ができあがった脚本を見せると、若い映画会社社員(柄本佑)が「ターゲットはどのあたりですか」と聞くので「誰に見せたいってことか。オレにだよ」「究極の贅沢ですね」「これで最後にする。頼む」

この時田を奥田瑛二がまさに飄々と演じる。滑稽さを自覚した感じがいい。大学生たちもリアルだし、「雨に歌えば」を学生が踊ってそれを撮影する様子など、見ていて楽しくなる。

この映画の弱いところは、「文学性」だろう。謎の女子高生をつけまわし、幻想にふけるあたりがちょっと古い感じがする。この部分が別の展開をしたら良かったのに。

一番心が動いたのは、時田が別居中の娘を訪ねるシーン。別れた妻が気づいて走ってくるが、それは高橋恵子(高橋監督夫人、関根恵子)だった。彼女の美しさにびっくり。

あっけない終わり方もよかった。こんなに楽しんだのは、自分も大学で映画を教えているからかもしれないが。若い人にはおもしろくないかもと書いたが、映画を学んでいる学生ならきっと楽しめるだろう。

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