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2015年9月27日 (日)

『3泊4日、5時の鐘』の安定感

『3泊4日、5時の鐘』の評判がいいので、劇場に見に行った。製作の和エンタテインメントの小野光輔さんからこの作品のことを聞いていたこともある。三澤拓哉という87年生まれの監督の初脚本・監督作品というが、とてもそうは思えないほどの安定感で、たっぷり楽しんだ。

物語はたわいない。茅ヶ崎の旅館にゼミ合宿の学生たちが着く。一方で旅館の女将・理沙の元同僚のOL2人も、理沙の結婚パーティのためにやってくる。そこで起こるゼミの先生も含めての恋愛騒動。

騒動といっても、はっきりと好きも嫌いも言わないような、品のいいゲームのよう。OLの花梨(小篠恵奈)と真紀(杉野希妃)の言い争いはほとんどコメディーだし、学生の一人で旅館でバイトをしている知春(中崎敏)は、彼女たちと自分を好きな女子学生の間で右往左往する。

そんな集団劇が、まるでエリック・ロメールの映画のように、軽快に進む。卓球や花火、すいか、ワインといった小道具の使い方も絶妙。何より、登場人物たちの演技に無理がなく、カメラはその自然な動きを静かに追う。知春が街の人々と一列になって歩くゴミ拾いの場面など、何気ないショットにも映画らしさが溢れている。

舞台の旅館は、小津安二郎監督が脚本家の野田高梧と『東京物語』などを書いた「茅ヶ崎館」という。確かにときおり入る風景や瓶などの固定ショットの積み重ねに小津らしいタッチを感じる。しかし映画は小津には全く縛られず、自由に今風の感情の機微を描き出す。

全体に品の良さが漂っているが、終盤にそれを壊す衝撃のシーンも挟み込まれている。そしてラストの結婚パーティはすべてを洗い流すように進む。うまい。これが最初の映画とは信じられない。

パンフによれば、三澤監督は明大文学部に進学後、日本映画大学に入り直し、今年28歳で4年生のようだ。深田晃司監督の『ほとりの朔子』のアシスタント・プロデューサーを務めたというが、確かにあの映画の夏の光景に似た感じはある。でも違う、もっと軽やか。

製作の和エンタテインメントというのは、この映画に出てプロデュースをしている杉野希妃の会社でもあるが、彼女は最近は監督も手掛けていて、『欲動』はかなりの出来だった。何だか今後まだまだ才能が出てきそうな気がする。

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