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2015年9月 4日 (金)

日本映画の出ないベネチア:その(1)

7月末にベネチア国際映画祭のラインナップが発表された時、びっくりした。コンペにもオリンゾンティ部門にも日本映画が入っていなかったから。最近は三大映画祭にはだいたい日本映画は1、2本は出る。とりわけベネチアは歴代のディレクターが日本映画好きということもあり、多い年だと5、6本出ていた。

調べてみたら、ベネチアでは2002年の『ドールズ』以来、毎年邦画がコンペに出ていた。08年に至っては『アキレスと亀』『崖の上のポニョ』『スカイクロラ』とコンペに3本。今年は01年以来、14年ぶりに邦画がコンペに出ない年となった。

だから日本人が少ない。もともと配給会社は05年あたりから少し後のトロントにシフトしていっていたが、日本映画が出ないと新聞記者やライターも来ない。今年は朝日と共同のみか。だからある意味ではゆっくりと映画を楽しむことができる。

それでも今回は、映画を見る基準が、最近の日本映画より本当に良かったかと考えたくなる。例えば『ロマンス』や『ビリギャル』や『トイレのピエタ』は海外のメジャーな映画祭に出ていないが、それらよりもいいのかと厳しい眼になる。

その意味では初日に見た2本は、とてもそうは思えなかった。オリゾンティ部門のロドリゴ・プラ監督(メキシコ)の「千の頭の怪物」Un monstrruo de mil cabzasは、病気の夫を救うために熱心でない医者を脅し、ピストルを持って追いかける話。社会派ドラマのように始まるが途中からはアクションものになり、あるいはサイコドラマにも見える。一言で言うと何を言いたいのかわからないし、一見凝った映像も底が浅い。75分という短さが救い。

それに比べたら、コンペのキャリー・フクナガの「故国のない獣たち」Beasts of No Nationは、136分という長尺を飽きさせない。アフリカの内戦で家族を目の前で殺された少年アグは、別の人殺し集団NDFに拾われる。最初は殺人を嫌がっていたアグだが、だんだん楽しくなる。しかしその集団でも内紛が起こる。

とにかく見ていて残酷で私でも目を背けたくなるし、人殺しをある意味で当たり前のこととして描いているので、人間の残忍さが嫌になる。集団的な狂気はどこにでもあると思うが、それを基準とした世界だけが描かれるので、救いがない。何といっても、誰が見たいだろうかと思ってしまった。

実はこの映画の最初にクレジットとして出てくるのは「ネットフリックス」。今月日本にも登場した見放題の映像提供会社のオリジナル映画だった。それにしてはずいぶん思い切った映画だ。小さく劇場で公開するのならわかるけど、とても「見放題」には向かない気がした。

これから毎日、「これならもっとマシな日本映画があるのに」とつぶやきながら一週間を過ごすのだろうか。

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