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2015年9月 1日 (火)

『ナイトクローラー』の現代性

映画『ナイトクローラー』を劇場で見て、ジェイク・ギレンホール演じる主人公ルイに「こんな奴、いそうだなあ」と思った。同時に「絶対につきあいたくない」とも。それほどこのキャラクターは現代的だ。

ロスに住むルイは、コソ泥で何とか生きているが、将来は起業したいと考えている。とにかくすべてに前向きで押しが強いが、すべてはネットで学んだという。

そんな彼が偶然にテレビに映像を売るフリーのカメラマンを見て、見よう見まねで真似をする。その映像が運よく売れて、それからは警察の無線を傍受し、事故現場に駆けつける。テレビ局の女性ディレクターのアドバイスで、「刺激的な映像」「郊外に住む裕福な白人がマイノリティや貧困層にやられる場面」を狙う。

助手もインターンとして無給で雇い、よく見えるように遺体の位置を移動させて撮影する。それがさらに高く売れて、ルイの行動はどんどんエスカレートする。彼にはモラルが全くなく、同業者や自分の助手が重傷を負っても気にしない。死体を見つけると目が輝いて撮影する。

通常のアメリカ映画のように、そんな男にはやはり罰が下りましたという展開ではない。むしろ、悪はこれからも続くという感じ。ルイ役のジェイク・ギレンホールの変化がすごい。どんどん殺気立っていって、大きな目が爬虫類のよう。

すべてをネットで学んだひとりよがりで人間性を欠いた主人公が現代的だし、カメラの性能が上がって、安いカメラで誰でもテレビ用映像が取れてしまうのもここ数年の話。何より、テレビ視聴者がより刺激的な映像を求めているというのが、世界共通の現象だ。これがなければ、ルイの仕事は成り立たない。

すべてがつながって、世界は悪い方へ向かうような感じの映画で、後味は悪い。しかしこの現代性に目を背けることはできない。これはダン・ギルロイという監督の第一回長編だが、既に脚本家としてキャリアを持つ。道理で脚本がうまいと思った。それに最初のロスの街のショットから、映画らしい雰囲気がきちんと出ている。今後が楽しみ。

話は変わるが、国会前デモの翌日朝刊各紙の報道ぶりを比べて驚いた。一番大きな扱いは、「東京」で1面トップ。次が「朝日」と「毎日」で1面の左半分。「日経」は小さく第1社会面左。すごいのは「読売」で、第2社会面のうえ、「安保法案「反対」「賛成」デモ」の見出しで、賛成派の小さな集会をほぼ同等に扱い、それぞれ写真つき。国会前の写真も唯一空撮ではなく、まるで私が撮った写真のようだ。

もちろんヘリも飛ばしているだろうが、このデモをできるだけ小さく見せたいという強い意志が感じられる。「産経」はもっとすごいのかもしれないが、コンビニになかった。

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