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2015年9月15日 (火)

日本映画の出ないベネチア:その(10)

もう帰国して3日目なので、このへんでベネチアについては最後にする。コンペではアトム・エゴヤン監督の「リメンバー」Rememberと中国のザオ・リャン監督のドキュメンタリー「ベヘモス」Behemothが最後の2日で上映されたが、賞にはからまなかった。

「リメンバー」は、妻に先立たれて軽度の認知症になった老人ゼフが、同じ施設にいる友人のアドバイスで、ナチ収容所の処刑人を殺すべく、旅をする話。ゼフが出会う最初の老人をブルーノ・ガンツが演じていたりして、なかなか盛り上がるが、後半は話を作り過ぎていささか引いてしまった。それでもサスペンス溢れる演出で、ゼフが2度弾くピアノのシーンは抜群。

「ベヘモス」は、四川省の鉱山の悲惨な状況を描くドキュメンタリー。前半は炭鉱で働く人々を遠くから哲学的に描くが、後半はカメラが個々の人々に寄り添う。肺病になった人々の姿はあまりにも痛々しい。そしてラストに写る巨大なマンション群の恐ろしいことと言ったら。中国政府はこんな映画を上映したことを怒っているだろうな。官能的なワン・ビンの映像に比べると、いささか説明的かもしれないが。

そのほか、イタリア映画2本について記しておきたい。監督週間のヴィンツェンツォ・マッラ監督の「最初の光」La prima luceが抜群に良かった。この監督はイタリア映画祭でも何度か上映した監督だが、これまでは村人の生活や自然を静かに描く映画を作っていた。

ところが今回は、何と人気男優のリッカルド・スカマルチョを主演にした都市の家族もの。南イタリアのバーリに住む若い弁護士はチリ出身の女性と結婚して子供もいるが、妻は急にチリに帰ると言う。結局妻は勝手に子供を連れてチリに帰るが、それを夫は取り戻しに行く。繊細な演出は健在で、個人的にはこれがコンペに出て欲しかった。

コンペ外招待のフランコ・マレスコ監督「この街の人々は彼のことを知らない フランコ・スカルダティの人生と演劇」は、2年前に亡くなったパレルモの演劇人、フランコ・スカルダティを巡るドキュメンタリー。多くの演劇、映画関係者が彼のことを讃えるが、地元の人のほとんどは彼のことを知らない。時おりベルルスコーニへの皮肉も交えた秀逸なドキュメンタリー。

結局2日午後から11日午前中までに、28本見た。プラス、途中まで見たのが2本。いやはや疲れた。新作を見続けるのはラクじゃない。今は、もう映画祭に行くのは打ち止めにしようかという気分だが、どうだろうか。

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