« 30年目の東京国際映画祭:その(3) | トップページ | 30年目の東京国際映画祭:その(5) »

2015年10月26日 (月)

30年目の東京国際映画祭:その(4)

日曜朝にマンションの管理組合総会を途中で退席し、慌てて六本木へ行った。ところがコンペのハオ・ジエ監督『ぼくの桃色の夢』プレス試写は、「素材のトラブル」で上映キャンセルだった。一瞬、中国映画だから政治的理由かとも思ったが、考えてみたら既に一般上映は済んでいた。

というわけで、とりあえず同じ時間帯に上映される「日本映画スプラッシュ」の『知らない、ふたり』に飛び込んだ。最初は靴屋で働く韓国の美青年が出てくるが、登場人物がどんどん増えてわからなくなった。そのうえ、見ていると、時間が1週間後に戻ったり、1週間後に進んだり。

登場する7人の男女のうち、日本人は女性2人で、あとは韓国人が日本語と韓国語を話す。日本人女性のひとりも韓国語が達者だ。30分くらいして、ようやく登場人物たちの誰が誰を好きかがわかってきた。それからは、ちょっとずれた会話の間が楽しくなる。まわりの音はほとんど聞こえず、沈黙の中で気まずい会話が響き、時が流れる。2つの言語を行き来するずれの感覚も楽しい。

なかなかやるじゃないかと思ったと同時に、ちょっとあざといというか、作り過ぎかもという気になった。ロメールやホン・サンスの路線だが、彼らの即興感覚はない。見終わって監督名を見たら、今泉力哉だった。実を言うと、韓国人の監督じゃないかと思ったのだが。今泉監督ならやりかねない。『サッド・ティー』など、男女の好き嫌いを描く集団劇の名手だから。レンや青柳文子など、俳優たちも魅力的だった。

それから長い空き時間をシネマ・ラウンジで仕事をして過ごし、コンペの『スナップ』を見た。タイのコンデナート・ジャトゥランラッサミー監督の映画だが、これまた20代の恋愛ものだった。もっともこちらは、田舎の高校を出た同級生たちが、そのうちの2人の結婚を機に、8年後に高校に集まるというノスタルジックなテイスト。

中心となるのは、金持ちの娘で将校と結婚予定のプンとカメラマンになったボーイ。かつてお互いに思っていたが、何もないままに別れた。そして再会し、かつての思い出が蘇る。描写は丁寧だが、全体に甘ったるい追憶感が詰まっていて、その割に物語は一向に進行しないので、途中で少し退屈した。

驚くのは、途中で戒厳令のニュースが流れたりすること。インスタグラムなどを使った現代風な構成と甘酸っぱい青春物語の中で、政治的な不安定が違和感なく収まっていた。この映画はワールド・プレミア。見損ねた『ぼくの桃色の夢』もそうだが、邦画とアジア映画だけが世界初上映とは、ちょっと情けない。

|

« 30年目の東京国際映画祭:その(3) | トップページ | 30年目の東京国際映画祭:その(5) »

映画」カテゴリの記事

コメント

ありがとうございます。
東京国際で見ていただけていたんですね。
また今後ともよろしくお願いします。

今泉

投稿: 今泉力哉 | 2016年2月29日 (月) 02時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/62550977

この記事へのトラックバック一覧です: 30年目の東京国際映画祭:その(4):

« 30年目の東京国際映画祭:その(3) | トップページ | 30年目の東京国際映画祭:その(5) »