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2015年10月28日 (水)

映画祭中の読書:林真理子『マイストーリー』

毎日映画祭のことばかり書いていると、見に行くことができない方には申し訳ないので、たまには違う話を書く。映画祭の始まりの頃に読んだのは、林真理子著『マイストーリー』。もともとこの著者は苦手だが、「朝日新聞」連載時に気になっていた。

実は最初のあたりは熱心に読んでいた。女性作家・漆多香子の母親が娘を嫉妬して、自費出版で小説を出すという展開に興味があった。その後母親が小説を出すあたりで、私がベネチアや釜山に行ったせいで読めなくなり、わからなくなった。

後半は再び読んでいた。語り手のはずの自費出版の編集者・太田自身が、自費出版で亡き夫の本を出そうという未亡人と恋に落ちる展開が、バカバカしくもリアルで楽しみにしていた。さてこれが前半とどう関係があるのかも気になっていた。

読みやすいので、たぶん2、3時間で読み通したが、それなりに楽しかった。わかったのは、全体の構成はずいぶん無理があること。最初は亡くなった老人の仏壇にできあがったばかりの自費出版の本を持って行って、編集者の太田は家族に嫌がられるという絶妙の出だし。それから自費出版から作家になった男を囲む編集者たちの集まり。

そこから浮かび上がるのは、本はどんどん売れなくなり、食えない作家は増えているのに、本を書きたい人々は無限に増殖しているという事実だ。そして作家の娘を嫉妬する母親の話が出てくる。もともと自費出版の話は娘が持ち出したが、母が書く文章を編集者を通じて入手して仰天する。そこには60代当時の母が、30代の娘の編集者と関係を持つ話が書かれていたから。

結局本は出版されて、何と初版の1000部から重版となって、6000部が売れた。母のもとには、ほかの出版社から本を出さないかと依頼が来た。

そこまでが前半の1/4で、そこから太田自身の災難が始まる。地方で映画館を立ち上げてガンで亡くなった夫の妻、高橋由貴は、「自分語りフェスティバル」にブースを出していた高橋に出会う。その話は、大手出版社から引き抜かれた男・辺見がテレビ化することにこぎ着けて一挙に大きくなる。そして太田は恋に落ちて失脚する。

この本でおもしろいのは、辺見を始めとする業界人のいやらしさもさることながら、高橋由貴の生き方の生々しいまでのずぶとさだ。嫌な女の典型のように描かれるが、男はそれに騙される。全体がカリカチュアのようで、「何と人間は愚かなのか」というトーンが気にはなったが、映画祭の合間に読むのにはぴったりだった。

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