『合葬』への違和感
小林達夫監督の初メジャー作品『合葬』を劇場で見た。見に行ったのは、1週間前の「朝日」で石飛記者が『3泊4日、5時の鐘』、『螺旋銀河』と共に、「若手監督、豊作」という見出しで取りあげていたから。いずれも30歳前後の監督という。
3本とも現在上映中で『3泊4日、5時の鐘』は抜群におもしろかったが、『螺旋銀河』には疑問が残った。「今後に期待したい」というのが正直なところ。
『合葬』も同じく「今後に期待したい」と思った。もちろん自主映画風の『螺旋階段』とはベクトルは全く逆方向。こちらは、冒頭のヘンな女性のナレーション(カヒミ カリィと後でわかった)から、違和感がある。それから濡れた草履の謎めいた話。
「彰義隊」の一員の極(柳楽優弥)がわからない。許嫁を断りながら、芸者と遊ぶ理由も、男3人で写真を撮るわけも。彼と行動を共にする2人の若者がなぜそうするのかも伝わってこない。そして彼らを率いる森(オダギリジョー)の存在もわからない。
わからないと思っていると、変わったショットが次々に出てくる。斜めから撮ったり、上から撮ったり。何と、アメリカの青春もののような英語の音楽もかかる。さらにちょっと前衛的な音楽も。雨や水があちこちに出てくるのも気になる。
それにしても、幕末の会話が若者とはいえあまりにも現代風過ぎる。もちろんそれは意識的な試みで、つまるところ幕末の若き侍たちを現代の若者に置き換えて描きたかったのだろうと思う。それにしてはセットは立派だし、撮影も工夫されているだけに、どこか落ち着かない。
今回の映画の前に「松竹ブルーライン」というタイトルが出た。最近は邦画大手のビデオ事業部や映像事業部が中心となった若手監督による低予算映画が増えたけれど、これはそのラインを定番化するということだろうか。ひょっとすると、現代は新人監督デビューのチャンスかもしれない。
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