« 『母と暮らせば』の長崎弁 | トップページ | 藤田嗣治の26点 »

2015年11月 8日 (日)

ようやくウェルズを見る

フィルムセンターのオーソン・ウェルズ特集にようやく行くことができた。東京国際映画祭期間と重なっていたので、これまで行けなかったから。見たのは『上海から来た女』(1948)と『不滅の物語』(1968)。

実は私はウェルズとは相性が良くない。30年ほど前にパリで有名な作品は見たはずだが、なぜか多くの場合途中で寝てしまった。みんながすごいすごいと言うけど、本当のところはわからなかった。

今回の上映は映画の前に、彼が70年代に出演した日本のニッカ・ウィスキーのCMが3本流された。かなり老いたウェルズがご機嫌そうに「旅」とか「神秘」とか「伝統」とかいいながら、最後においしそうに飲みながら「G&G、ニッカ」と言うパターン。

もともと監督をしながら主演をするというパターンなので、シュトロハイムなどもそうだが、完全に顔が知られている。あえてそれをわかったうえで、太った髭もじゃのヘンな天才を演じている感じがCMから伝わってきた。ちなみに私はこのCMの記憶がない。アラン・ドロンやチャールズ・ブロンソンは覚えているが。

『上海から来た女』は復元版の上映で、まずプリントが美しかった。若いウェルズが自らのナレーションで出てきて、美女(リタ・ヘイワース)との出会いを語る。それから彼女に誘われて彼女の夫や付き人とヨットに乗って、メキシコなどへ行く。とにかく出てくる男たちがみんなヘンだし、カメラが縦横無尽に動いて奇妙なアップが繰り返されて眩暈がしてくる。

結局は殺人事件に巻き込まれるわけだが、物語のわからなさと人物の奇妙さとカメラの異常さのなかで、不思議な快感が生まれてくる。なぜかずいぶんきちっとした髪型のリタ・ヘイワースが、ウェルズと水族館で愛を語り、キスをするシーンや、中国人街の劇場に紛れた後に遊園地のマジック・ミラーで銃を撃ち合うラストなど何とも印象的で、これは最上級のフィルムノワールではないかと思った。

その後に見た『不滅の物語』は仏語版を30年前に見ていたが、全く記憶になかった。今回は英語版で、マカオを舞台にアメリカの金持ちがお金を払って若い船乗りと美女(ジャンヌ・モロー)にセックスをさせる。実はウェルズはその翌日の朝ににベランダの揺り椅子で死んでいた。なんだか遺書のような映画だった。

『上海から来た女』はウェルズが殺人の代償として5000ドルをもらうという話だし、『不滅の物語』はモローが500ギニーをもらうという話でどちらも中国人が出てくる。偶然だけど、つながっているように思えてきた。

|

« 『母と暮らせば』の長崎弁 | トップページ | 藤田嗣治の26点 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/62632533

この記事へのトラックバック一覧です: ようやくウェルズを見る:

« 『母と暮らせば』の長崎弁 | トップページ | 藤田嗣治の26点 »