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2015年11月14日 (土)

『ヤクザと憲法』の描くヤクザ

予告編を見に行って気になっていた『ヤクザと憲法』の試写を見た。最近劇場公開が続く東海テレビの製作したドキュメンタリーで、1月2日から公開という。監督は同テレビの圡方宏史。

これが予想通りおもしろかった。やはりドキュメンタリーは写す対象が興味深い人間だと、それだけでおもしろくなる。この映画で写るのは、大阪府堺市の指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」の事務所にいるヤクザたちだ。どこにでもあるような、1階が駐車場の3階建てだが、2階の入口は分厚い鉄の扉。

そこにいる男たちは極めて普通だ。「部屋住み」と呼ばれる数名が暮らすのは3階で、質素だが本がたくさんあって、昔の学生下宿のよう。「拳銃はないのですか」とクルーが聞くと「テレビの見過ぎじゃないですか」

そこに住む男の1人は、かつては妻子があってペンキ屋をしていて食えなくなった時に「助けてくれたのが今のアニキです。苦しい時、誰か助けてくれます?」という。21歳の若者はひたすら口をつむんでおり、別室で折檻を受けたりする音声まで聞こえるが、そこにいることに満足しているふうだ。

清勇会の会長、川口和弘は61歳とは見えないほど若々しく、みんなに優しい。通天閣の下の居酒屋のおかみは「この人らは守ってくれる。警察なんて誰も守ってくれへん」。彼が15年間の実刑の後に出所する映像が流れる。

後半、今の法律はヤクザに人権を認めないことを写す。銀行口座は作れない、保険に入れない、宅配便は拒否され、ピザなどの配達もしてくれないことが組員の口から出てくる。高校生の息子を持つヤクザが、銀行口座が持てないので授業料の引き落としができず、現金を持たせてみんなにヤクザの子だとばれた話をする。そのヤクザの顔はモザイクだったが。

そして、組員の自動車事故で保険の交渉がこじれると、警察は詐欺未遂として捜査許可証を持って事務所に現れた。組員たちをはじめとしてすべてを写真に撮る。それをカメラに撮ろうとするクルーに「撮るなー」と叫び、カメラを押さえる。どっちがヤクザかわからない。

会長に「ヤクザをやめたらいいじゃないですか」と言うと、「やめたらわしらをどこが受け入れてくれますか?ありゃしませんで」。ヤクザに在日や部落出身者が多いとは昔から言われているが、現在のヤクザはもはやマイノリティに近い気がしてきた。

そのほか山口組顧問弁護士の山之内氏の話もサイドストーリーとして流れる。これについては後日書く。いずれにせよ、この映画は来年正月に大きな話題になるのではないか。

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