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2015年11月 5日 (木)

『キャロル』に心が震える

英語を話す映画で、久しぶりに心が震えるような映画を見た。2月11日公開のトッド・ヘインズ監督『キャロル』のことだ。この監督は1950年代を描いた『エデンより彼方』(2002)が大好きだったが、今回も50年代が舞台。ところがタッチが違う。

『エデンより彼方に』は、ダグラス・サークばりの人種問題を交えたベタなメロドラマだが、今回は女性同士の愛をシンプルに、かつサスペンスたっぷりに描く。

百貨店の販売員のテレーズ(ルーニー・マーラ)は、ある時子供向けの列車のおもちゃを買いに来たキャロル(ケイト・ブランシェット)に目を奪われる。キャロルが忘れた手袋をおもちゃと一緒に送ったことが縁で、キャロルからお礼の電話がある。

ふたりはまず昼食を共にし、お互いの家を訪ねる。そしてだんだん近くで見つめ合い、手を触れ合う。テレーズはキャロルが夫と不仲なのを知る。そしてふたりは年末に旅に出る。

ふたりが少しずつ近づいてゆく様子が、サスペンスたっぷりに描かれる。キスをする瞬間なんて見ていてドキドキしてしまう。さらにキャロルの夫との離婚問題も予断を許さず迫ってくる。

何も知らない素朴な娘という感じのテレーズが次第に恋に目覚め、趣味の写真を仕事にしようと自立してゆく変化がすばらしい。途中からはオードリー・ヘップバーンのようにくっきりとした視線で魅了する。一方、ブロンドの髪をいつも優雅になびかせるキャロルは、まるでフィルム・ノワールのローレン・バコールのように余裕たっぷりだが、内には激情を秘めている強い女だ。

1950年代ゆえの抑制と道徳が支配する世の中を、孤高の愛がするすると通り抜けてゆく感じか。赤やオレンジを中心にしたコートや帽子のケイト・ブランシェットの優美な姿と、色とりどりの毛糸の帽子をかぶって少女のようなルーニー・マーラの全く異なる組み合わせが、なぜかぴったりと見える不思議さ。16ミリで撮影された荒々しい映像が、そのままふたりの激情を表している。

最後のテレーズの表情に、なぜか大いなる勝利のようなものを感じて心が高鳴ったままに映画は終わった。これはもう一度見たい。

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