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2015年11月22日 (日)

韓国映画『自由夫人』を見る

フィルムセンターで『韓国映画1934-1959 創造と開化』が始まった。初日に韓瀅模(ハン・ヒョンモ)監督の『自由夫人』(1956)を見たが、これがなかなかおもしろかった。実を言うと私は、1996年に「韓国映画祭」を企画したことがある。

1946年から96年までの韓国映画80本余りを上映したが、私の映画企画で唯一赤字になった。それからしばらくして韓流が流行り出したので、早すぎたと後悔したものだ。今回のフィルムセンターの企画は1930年代から50年代までの29本を21プログラムで上映するものだが、私の映画祭で上映したものと1本も重なっていない。

ハン・ヒュンモという監督もたぶん見るのは初めてだと思う。演出はオーソドックスで、『自由夫人』は東宝のサラリーマンものに近いタッチだった。実際に森重久彌に似た社長まで出てくるが、こちらの主人公は大学教授とその妻。

教授の妻は生活のために、洋品店「巴里」に働きに出る。そこの社長に気にいられたり、通勤途中で女学生時代の悪い友人に合ったり、隣に住むアメリカ留学前の青年に愛を告白されたり。ダンスパーティなどに出かけて生活はどんどん派手になる。

教授もハングル語を教える会に招かれて、その代表の若い女性に気にいられる。夫人の悪友は、洋品店の客でもある貿易会社の社長と仲良くなって温泉に行き、悪事に手を染めて教授夫人も巻き込もうとする。

舞台はバスや車がひっきりなしに通る大都会のソウルで、喫茶店「25時」とか気取った洋食店とかダンスホールとかホテルとかがどんどん出てくるし、これが朝鮮戦争直後の韓国かと思うほどモダン。そのうえに、テーマは主婦が仕事に出ているうちに不倫に目覚める話で、キスのシーンも何度かある。

気取った時に「グッドモーニング」とか「アイラブユー」とか「ノータッチ」とかの英語が出てくるのもおかしい。音楽は冒頭の「ドナウ川のさざ波」に始まって「ツィゴイネルワイゼン」などのクラシックから「ジョニー・ギター」やシャンソンまで盛りだくさん。

この映画は当時大ヒットしたという。女性の労働や不倫を扱いながら、結局は夫人は家庭に帰り、教授は一旦追い出すが子供の願いを聞いて家に入れるという保守的な結末も良かったのだろう。映画の演出としては同時代の日本映画の方が洗練されているが、ストーリー展開はたぶん日本と同じ。

あえて韓国らしいといえば、悪友が警察で訊問される時に、後ろに「防諜」というスパイ防止のポスターがあったことくらいか。当時の韓国映画をもっと見たくなった。

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