村上隆、健在
六本木の森美術館で「村上隆の五百羅漢図展」を見た。村上隆と言えば、アニメ風の絵やフィギュアで2000年頃から有名になった現代作家。『芸術起業論』など本も書いて、刺激的な発言を続けている。
個人的には、マーケッティングだけで現代美術をやっている人だと思っていた。2001年の東京都現代美術館での個展でも、90年代の日本画の要素が混じるものは興味深いが、アニメキャラの作品はどうしてもなじめなかった。もちろん、それらを日本ならではの現代美術として発表したことの意味はあるけれど。
その後、ルイ・ヴィトンとのコラボやヴェルサイユ宮殿での展示の話を聞いても、ピンと来なかった。だから今回の展覧会もあまり期待はしていなかったが、これが予想以上におもしろかった。作品は2012年以降の新しいものばかり。どれもアニメの要素を使って、伝統的な日本美術と現代アートを組み合わせた感じか。
どの絵も地に当たる部分まで細かい模様が入っていたりして、手が込んでいる。展覧会名にもなっている《五百羅漢図》は高さ3メートル、幅100メートルの巨大なもので、500人の大小の羅漢がびっしり書き込まれていて、見飽きない。遠くから見ると曼荼羅のようだし、近くで見ても細密画のようで見ごたえがある。
これは2012年にカタールのドーハで開かれた個展のために作られたものらしい。最近日本で見ないと思っていたら、ドーハとは。かつてのアニメキャラを生かしながらも、日本美術史全体に挑んでいる感じ。その極彩色に底知れぬパワーが込められている。
会場の解説によれば、200人の学生を使って24時間2交代制で完成させたという。まるで17世紀の宮廷画家や江戸時代の狩野派の「工房作」のようだ。もちろん狩野派だって数名だろうけど。いったいどのような制作システムか想像もつかないが、エネルギーの塊のような作品群に、若い学生たちの精力が注ぎ込まれているのは間違いない。
かつてスキャンダラスな作品で一世を風靡した美術作家が、使えるものをすべて使って生き残ろうとしている、そんなすさまじいパワーを感じた展覧会だった。村上隆、健在である。3月6日まで。
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