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2015年11月 3日 (火)

久しぶりのアピチャッポン

東京国際映画祭でブリランテ・メンドーサやイシュマエル・ベルナールらのアジアの天才監督にやられてしまったので、またそんなものを見たいと思ったら、アピチャッポン・ウィーラセタクーン監督の『世紀の光』の試写があった。タイの天才が2006年に作った映画だが、来年1月に公開という。

アピチャッポンを見るのは、『ブンミおじさんの森』(2010)以来。今回の作品はその1本前の映画だが、久しぶりに見ると、彼が通常の映画を越えた何かを表現しようとしていることがよくわかる。

最初の風に揺れる林のショットから何か神々しい。部屋の中には1人の女と2人の男。女医のターイは新しい医師ノーンの面接をしている。次に僧侶が診断を受けている。僧侶はターイに薬草を出して困らせる。

その後部屋のもう一人の男トアはターイに「婚約して欲しい」と迫る。ターイはかつて好きだった花屋の話をして、映画は花屋を追う。すると突然音楽が鳴り、夜の市場で歌う男が現れる。彼は歯科医で、僧侶の付き人と話す。

ここまでが前半だが、何が何だかわからない。しかしそこには妙な愛情の絡み合いがあり、まさに夢を見ているようにつじつまは合わないが、強烈な何かが感覚的に続いてゆく。

そして驚くのは後半。最初と同じ3人がいるが、病院はもっと大きく、クロースアップで男女を見せる。これまでの夢が反復されて悪夢になったようだ。今度はノーンが中心で、僧侶を診断する。病院の庭に立つ胸像をいくつも移動撮影で見せ、廊下ではジャージで集団で走ったり、テニスをする者もいる。

ノーン医師の前には中年の女医が2人現れて勝手な話をして、義足からウィスキーを取り出して酒盛りを始める。女医の1人の息子が現れて、来世も生きると言う。ノーン医師の部屋には恋人が現れて2人はキスを始め、ノーンの股間は大きくなる。

義足などが並ぶ病院の地下では、何か工事が進む。排気口からどんどん煙が出る。そして公園でダンスをする人々。走る人々。体操をする人々。そこに流れる強烈な音楽。

視聴覚を柔らかにしかし強く刺激されながら、意識がぐにゃぐにゃになってゆく。意味不明な快感が全身に広がってゆく。やはりアピチャッポンはすごい。

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