暗澹たる本:『死都ゴモラ』
最近読んだ本で一番暗澹たる気持ちになったのが、ロベルト・サヴィアーノ著『死都ゴモラ』。これはマッテオ・ガローネ監督の『ゴモラ』(2008)という映画の原作で、映画が良かったので前から読もうと思っていた。これが映画よりすごい。
映画はこの本から4つのエピソードをわかりやすく取り上げているが、こちらはノンフィクションというか、著者の語りによる暗黒の事実の羅列が、叙事詩のようにえんえんと続く。
「ゴモラ」というのはもちろん旧約聖書の悪徳の都だが、ここではナポリのことを指す。冒頭のナポリの港湾でコンテナから何十もの中国人の死体が船上に落ちてゆく描写にガツンとやられる。「全員が凍結され、ひとかたまりに置かれている。一人がほかの一人に重ねられて。缶詰のニシンのように、列をなして並べられている。それらは死ぬいわれのない中国人だった」
ナポリは中国製品の7割が経由すると同時に、無数の中国人がそこで働いている。「ナポリ港では中国最大の国営擬装企業が稼働している。この企業は世界第三位の船団を所有しており、コンテナについて最大のターミナルを管理下においている」
「製品は、雑種的で私生児的な多くの市民権を持っている。それは中国の中央部で半製品として作られ、そのあとスラヴのどこかの周辺国で手を加えられ、イタリアの北東地方でまた加工され、さらにプーリア州かティラーノ北部で仕上げられ、最後にヨーロッパのどこかの店にならぶ」
この本を読むと、イタリアのあるいはヨーロッパのブランドとパチものとの差がほとんどないことがわかる。どちらも元は中国で作られており、仕上げの工場がミラノやフィレンツェのブランドから発注を受けるかどうかで分かれてゆく。これは映画でもあったセリの場面で決まる。
すべてはカモーラと呼ばれるヤクザのような集団につながっている。ファッションも麻薬も金融も廃棄物処理も。そしてそれは中国とつながっている。
「100万トンのハイテク廃棄物が毎年ヨーロッパを去って、中国へ向かっている。九竜では汚染がたちまち広がり、自由に地下水が飲めなくなって、隣接した地域から飲料水をまわしてもらうという事態になった。香港のステークホールダーたちは、ナポリ港を全ヨーロッパの廃棄物の回収センターとし、中国の大地を高価格で埋められる廃棄物の処理センターにしようと夢見ていた」
「私はカモーラの地に生まれた。殺人がヨーロッパで最も多い土地、暴力が最も事業に緊密に結びついている土地、権力から生まれるもの以外には何も価値をもちえない土地に生まれた。ここでがすべては最後の戦いという思いを抱かされる」
パリのテロにも暗澹たる思いだが、ナポリ―中国ルートの抱える闇はもっと深いかもしれない。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- うんざりしながら読む新書:その(1)(2026.08.01)
- 『実録!東映三角マーク宣伝部』を読む(2026.07.13)
- 『映画監督 崔洋一 映画は闘争だ!』を読む:続き(2026.07.03)
- 辻仁成からレーモン・オリヴィエへ(2026.06.17)
- 金子修介『無能助監督日記』を読む(2026.06.05)


コメント