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2015年11月18日 (水)

パリのテロに考える:続き

フランスがシリア空爆を開始したと聞いて、びっくりした。フランスは戦争を始める気だと思った。そして月曜夕方のオランド大統領の上院・下院全議員を前にしたヴェルサイユ演説を、昨日の朝に「ルモンド」の動画で全文を聞いて、唸ってしまった。

その演説は、「フランスは戦争をしています」La France est en guerreで始まるもので、口下手なオランドが高揚を隠し切れないように顔を赤くして興奮して話していた。「戦争」という言葉を何度も使うのが気になった。演説の後は議員全員が立ち上がり、「ラ・マルセイエーズ」の合唱。元奥さんのロワイヤルも歌っていた。何とも嫌な感じ。

演説では、ISを倒すために徹底的に戦う、国内では警察や税関を何千人増やしてセキュリティを増やす、そして非常事態に対処するために憲法を改正すると言った。

何となくオランドは社会党だから、こういう反応はないだろうと思っていたのは間違いだった。日本の保守・革新の図式を持ち込んだからそう思ったのだろう。憲法を変えると言うのだから、安倍首相のさらに先を発言してしまった。確かにフランスの社会党は自由主義経済ではなく、社会保障や労働対策に力を置いた大きな政府を目指すのだから、戦争もそのうちか。

そう思って今朝の「ルモンド」をネットで読んだら、9.11直後のブッシュの演説と今回のオランドの演説がいかに似ているかという記事があった。「戦争」という言葉をブッシュは14回使い、オランドは13回使ったらしい。もちろんブッシュ演説の最後は「世界各国は、アメリカと組むか、テロリストと組むか、決めて欲しい」で、フランスはそれほど単純な言い方ではなかったけど。

9.11後のイラク空爆に不参加を表明したのが、フランスだった。シラク政権のド・ヴィルパン外務大臣の国連演説はカッコ良かった。調べたら、彼は今回もシリア空爆に反対の意見を述べていたが。日本の新聞を読んでいると社説に「テロを非難する」とか当たり前のことしか書いていなくて、フランスを批判する視点がない。

そう思っていたら、今朝の「朝日」文化面に酒井啓子・千葉大教授が「パリで起きたような殺戮はシリアでは日々起きていて、その中にはフランスの攻撃による死もあることに、思いを巡らせる必要もあるでしょう」と語っていた。こういう視点が大事だと思う。彼女は次のようにも語っている。

「「テロとの戦い」という言葉はブッシュ政権の頃に使われました。イラクなどの民主化を打ち出して介入したものの失敗。スローガンだけが残りました。いま欧米諸国は、シリアや中東の人たちではなく、自国の安全と利益を守るためだけに「テロとの戦い」を掲げているように見えます。しかし本当の「戦い」は、内戦の解決に向けて動くことではないでしょうか」

ガラにもなく政治を語ってしまったが、もう、どうにも止まらなかった。

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コメント

ルモンドはさすがですね。日本がテロ攻撃を受けて、国全体が熱くなった時に、日本の新聞は果たして冷静な論調を保てるか。はなはだ不安はありますが、愛国的な空気に流されてしまわないよう、普段から心掛けておかなければ、と改めて思いました。

投稿: 石飛徳樹 | 2015年11月18日 (水) 09時46分

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