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2015年12月12日 (土)

『ロブスター』に面食らうも

今年のカンヌのコンペで審査員賞を取った『ロブスター』が3月5日に公開されるというので、試写を見に行った。ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督の作品だが、私は彼の『籠の中の乙女』(09)を見ていない。

今回は、コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥー、ベン・ウィショーなど有名俳優を使った全編英語の作品というので興味を持った。これがとんでもない映画だった。カンヌで見た人々は面食らったのではないか。

離婚した主人公デヴィッド(コリン・ファレル)は湖に面したホテルに連れて行かれた。そして、45日中にパートナーを見つけないと好みの動物に変えられると言われる。彼は思わず「ロブスター」になりたいと言う。それから、冷たい女との偽装結婚に耐えられず森に逃げると、そこには恋愛禁止令がひかれていた。それでもある女を好きになる。

はじまって10分もすると、バカバカしいと思う。ありえない不条理な設定で、思わせぶりに物語が進行してゆく。ところが感情を抑えた主演のコリン・ファレルを見ているうちに、何となく親しみが沸いてきて、まあ見てみようという気になる。全体のキッチュでノスタルジックなトーンがあって、随所に妙なユーモアが溢れているし。

ジョージ・オーウェルの小説のような近未来の管理社会だけれど、そこに苦悩はない。そこではすべてがドライで人は命令に従い、簡単に人を殺す。ホテルでオナニーを繰り返した男(ジョン・C・ライリー)は、熱いトースターに手を入れられて指を焼かれる。相手の見つからない女性は、飛び降り自殺をする。

そんな中でダヴィッドは結婚するが、犬にされた兄を妻に殺されて、怒りを爆発させる。妻とメイドを殺し、森に逃げるが、そこには独裁者のリーダーのような怖い女(レア・セドゥー)がいた。そこで近視の女(レイチェル・ワイズ)に出会い、いつしか惹かれてゆく。

ありえない不条理劇のようだが、映画は途中から純愛ものに近づいてくる。最初から出てくるナレーションの主も明らかになり、究極の結末が訪れる。

見終わると、確かにヘンな映画だがあるかもしれないと思った。人間の進化が少しずれていたら、こんな社会になっていたかもしれない。あるいはどこか別の星には、こういう世界があるかもしれないし、地球だって20年後にはこれに近くなるかもしれない。そんなことを考えさせる奇妙な力を持っている映画だった。

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