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2015年12月 6日 (日)

フィルムセンターの韓国映画特集に通う:5回目

金、土は比較的時間があるのに、雑事をこなしているうちに時間がなくなり、結局試写や映画館に行けなくてまたフィルムセンターに行った。見たのは、申相玉(シン・サンオク)監督の『地獄花』(1958)。

シン・サンオク監督は1996-7年の韓国映画祭でも何本も上映した。カタログを見ると、『ロマンス・パパ』(60)や『成春香』(61)『離れの客とお母さん』(61)『常緑樹』(61)『米』(61)と5本あった。あらゆるジャンルをこなす職人監督でありながら、どこかに反体制的な政治意識が紛れ込んでいる作風が印象に残っている。

今回の特集では、この監督の50年代の作品が4本もあって貴重。『地獄花』は初期の代表作だが、農村と大都市ソウルの落差を背景に米軍基地とパンパン、それに巣食うギャングなどを巧みに描いていて、今村昌平の『豚と軍艦』(61)を思わせなくもない。

物語はソウルに住み始めて音信不通になった兄を探して、青年が田舎から出てくるところから始まる。ソウル駅前でいきなり鞄を盗まれて一文無しになる出だしがうまい。ようやく兄を探し出すが、兄はパンパン(崔銀姫=チェ・ウニ)と仲良く、米軍物資の横流しをするギャングの一味だった。

朝鮮戦争後の李承晩大統領時代だが、ソウルの街の中には占領下のように英語の表示が目立つ。とりわけ米軍兵士の愛人となった韓国女性たちの振る舞いや、彼らのパーティのシーンにはドキュメンタリーのようなリアルさがある。言葉が聞こえなければ、50年代や60年代の日本の風景に見えるだろう。

チェ・ウニ演じる兄の愛人は、素直な弟に興味を持ち、ふたりに関係ができてしまう。彼らが海辺で仲良くしているところに、兄がやってきてふたりを投げ飛ばす。

後半は、兄が率いるギャング団が走行中の列車から大量の米軍物資を盗む展開で、鉄道とトラックを使った作戦は迫力があるし、愛人の通告で計画を知った警察が追いかけるあたりもスリリング。

最後は死にかけた兄とそれを救おうとする弟、弟と逃げようとする愛人の泥沼での三つ巴となって、ちょっとやりすぎな感じ。それも含めてサービス満点の娯楽作でありながら、アメリカに支配された韓国の哀しい青春が浮かび上がってきた。

この時既に監督はチェ・ウニと結婚していて、彼の作品にはすべて彼女が出ている。78年には北朝鮮に連行された彼女を追って北朝鮮に渡り、そこでも映画を数本撮ったはず。どんな映画を作ったのだろうか。

そういえば、私も遅ればせながら原節子追悼文を書いたので、ご一読を。

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