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2015年12月11日 (金)

駆け足で見た展覧会2つ

映画を教えるようになって、美術展を前より見るようになった。映画の画面の元ネタが絵画にあると感じることが多いし、それ以上に動かない長方形を見ることがかえって頭脳に快い刺激を与える。だから短い時間でも美術展に飛び込むことがある。

渋谷に試写を見に行ったら、東急文化村の「風景画の誕生」展が最終日だとわかり、駆け込んだ。「ウィーン美術史美術館所蔵」だからこれは価値があるのではなないかと思ったが、なかなか濃い内容だった。

この美術館はオーストリア・ハプスブルク家のコレクションが中心で、ドイツ、フランドル、オランダなどの北欧絵画のほか、イタリアのルネサンス絵画も豊富だ。一度行ったことがあるが、古い大きな建物の暗い部屋に中世から18世紀までの絵画がぎっしり詰まっている感じ。

今回の展覧会は16世紀から18世紀までの風景画を集めている。有名な画家の絵は少ないが、特に16世紀の板絵はどれも見応えがあった。宗教的なテーマの奥や窓にきちんと風景が描かれているものから始まって、広大な野原に生きる人々が点描のように描かれた絵が多い。見ていると絵の世界に吸い込まれそうになる。

12カ月の風景とそこに生きる人を描いた16世紀末のバッサーノやファルケンボルフの大きな季節画も見ていて楽しい。17世紀になると、画面から人がいなくなり、ロイスダールなどの風景のみの絵が出てくる。こうなると普通の絵に近づいて有難みが薄れた感じがした。カナレットのベネチアの風景を見ても、見慣れた気がした。

竹橋の藤田嗣治の戦争画を再度見に行って、ついでに見たのがこの13日まで開催の「Re: play」展。「「映像表現'72」展、再演」と書かれているが、1972年に京都市美術館で6日間だけ開かれた展覧会を再現するというもの。会場の真ん中に広い空間があって当時の展示を再現しており、それを壁が取り囲んで通路を作り、そこに参考資料やインタビュー映像などを展示している。

驚くのは、16ミリや8ミリの映写機とフィルムの氾濫だ。この数年で映画館からフィルムが消えてデジタル上映になってしまったが、ここでは物質としてのフィルムが新たな美術の素材として面白がられている。フィルムという素材に嬉々として取り組んだ現代美術作家たちの姿が目に浮かぶようだ。

出品しているのは16人で河口龍夫、村岡三郎、彦坂尚嘉、野村仁といった現代美術のビッグネームも多い。今見ると個々の作品はどうということはないが、「映像」が「フィルム」だった時代の熱が十分に感じられた。実は、会場で河口龍夫さんを目にした。30年ほど前にお会いしたことがあるが、ほとんど変わらないお姿を見て、嬉しかった。

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