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2015年12月18日 (金)

「水―神秘のかたち」展に日本人と水を考える

六本木のサントリー美術館で始まったばかりの「水―神秘のかたち」展を見た。サントリーと言えばアルコールを始めとした飲料水のメーカーなので、何となく企業宣伝的な感じもするが、展覧会自体はまっとうでなもの。日本人がいかに水と近い関係にあるかを考えてしまった。

弥生時代の銅鐸に始まって、波の姿を様式的に誇張して描いた絵や絵巻は多い。展示されている多くは作家名もない。それでも絵のあちこちに水があり、ダイナミックな画面を作っている。

始めの方にある室町時代の金剛寺蔵《日月山水図屏風》』は、いくつもの大きな山が緑で描かれているが、その中央や下の方には波が派手に舞っている。まるで山がどんぶりこと流されているかのようだ。日本人の感覚には、大地のまわりは水というのがあるのかもしれない。この屏風は「灌頂」という修行者の頭に水を注ぐ儀式に使われたという。

そのほか水源の神、航海の神、弁財天、雨乞い、龍信仰、浦島伝説や蓬莱山などなど。大阪の四天王寺や広島の厳島、滋賀の日吉大社など水への信仰が中心にある寺社もある。

江戸時代の《厳島三保松原図屏風》や《四天王寺住吉大祭祭礼図屏風》などを見ていると、海や川に囲まれたお寺があって、その中に生きる人々の姿がびっしりと描かれていて、楽しい気分になる。数人で集まって海に浸かっている場面もあるが、住吉の浜での禊らしい。

あるいは鏡、硯箱、文台から小袖や徳利、銚子まで水の模様を描いた生活品も多い。生活の中でも水の模様を見ることで心が安らいだのだろうか。

考えてみたら、私は九州の有明海に面した町で生まれ育った。自転車を20分も漕げば、海があった。友人には海苔の養殖を家業にしている家も多かった。町中に堀をめぐらした柳川も近い。だから映画で子供が「いつか海を見たい」という台詞を聞くと、そんな場所があるのかと不思議になった。確かにパリにセーヌ川はあるが、海は何時間も電車に乗らないと見られない。

海に囲まれた島国の日本という国では、水はほかの国より特別な意味を持つのだろう。展覧会を見ながら、そんなことを考えた。2月7日まで開催。

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