« 『友だちのパパが好き』の現代性 | トップページ | 渋谷でスマホを買い替える »

2015年12月26日 (土)

クリスマスに見るアピチャッポン

昨日のクリスマスは学生企画の「ニッポン・マイノリティ映画祭」の最終日で、ユーロスペースで過ごした。同じビルの映画美学校で3月公開のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督『光りの墓』の試写があったので、これ幸いと見に行った。

アピチャッポンはどれも不思議、フシギの世界だけれど、カンヌでパルムドールを取った『ブンミおじさんの森』(2010)で頂点に達したと思っていた。死んだ妻が現れたり、行方不明の息子が動物になって出てきたりと、死と生の間を自由に行き来する世界が強烈だった。

今回はそれに比べると静かで、大きなドラマはない。ただ全体として恐ろしく未来的で政治的な方向を目指しているような気がした。

舞台となるのはかつて学校だった病院。そこには原因不明の「眠り病」の元兵士たちが入院している。そこにやってきた松葉杖をつく中年女性のジェンは患者の魂と交流する若いケンと出会う。ジェンが患者のイットの体にクリームを塗っていると、イットは目覚める。ジェンはイットを連れて散歩する。

病院には、アフガニスタンの米兵に効果があったという光の柱がベッドごとに設置される。それは赤、緑、青と時間とともに色が変わる。病院の外ではクレーン車の工事が進んでいる。

森の中の病院で、時間、眠り、記憶といったものがあいまいになり、妙に心地よくなってくる。しかしそこには戦争や近代化の傷跡が確実に存在し、その解決を迫ってくる。

それでも今回はこれまでのアピチャッポンの映画に比べると人間関係がわかりやすいし、撮影がメキシコのディエゴ・ガルシアになったせいか、映像が普通にポエチックでメランコリックになった。クリスマスにふさわしい、恩寵に満ちた映画だとも思った。映画館でもう一度見たい。

さて、学生の映画祭の方は1週間で1746人の動員で、これまでの5年間で最高となった。学生は大喜びだが、来年以降もやるのかと思うと、気が遠くなる。

|

« 『友だちのパパが好き』の現代性 | トップページ | 渋谷でスマホを買い替える »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/62940615

この記事へのトラックバック一覧です: クリスマスに見るアピチャッポン:

« 『友だちのパパが好き』の現代性 | トップページ | 渋谷でスマホを買い替える »