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2015年12月17日 (木)

フィルムセンターの韓国映画特集に通う:6回目

昨日は今年最後の授業で、2つの大学で3コマをこなした後にフィルムセンターに行った。見たのはまた日本占領下の韓国映画で、李炳逸(イ・ビョンイル)監督の『半島の春』(1941)。映画『春香伝』を撮るスタッフを描いた映画というので、見たくなった。

主人公は脚本家の李英一。彼の友人の妹の貞喜が映画女優を目指して田舎から京城にやってくる。彼女の役はなかったが、春香役の映画会社の部長の愛人・安羅が突然降りるというので、出番が回ってくる。東京帰りの派手な安羅は英一に心を寄せ、部長は安羅から貞喜に乗り換えようとする。そんななか、英一は撮影の資金を会社から持ち出して、逮捕される。

最終的には安羅がそのお金を立て替えて英一は保釈され、新しい映画会社で『春香伝』ができた時に安羅は身を引く。英一と貞喜は東京の撮影所との交流のために、東京へ旅立つ。

つまりは勧善懲悪的な内容だけれど、一番興味深いのは日本語の使用だろう。東京帰りの安羅がほとんど日本語しか話さないのに反して、田舎から出てきた貞喜はほぼ韓国語。撮影は「カット!」「撮影中止」などは日本語だが、大半は韓国語。部長や警察や喫茶店は日本語のみ。ところが部長が貞喜に「結婚してくれ」という時は韓国語。

つまりオフィシャルは日本語だが、仲間内の話や親密な会話はすべて韓国語という感じ。この特集でこれまで見た韓国映画でこれほど日本語が混じっていたのはなかった。冒頭の題名も「半島の春」という日本語だし。スタッフには製作主任と音楽のみが日本人だったと思う。監督は日活の演出部にいたことがあるから、日本語を交えるのに抵抗はなかったのかもしれない。

演出として見た時に興味深いのは、人物が歩く時の移動撮影。英一と貞喜が歩く時にカメラは横に移動し、情感あふれる音楽が流れる。あるいは雨の中を歩く足だけが写ったり。ちょっと戦後の成瀬巳喜男の映画を思わせた。

『春香伝』の公開の日にほかの映画の看板もあったが、溝口の『芸道一代男』や小津の『戸田家の兄弟』、どこの映画か知らないが『ロビンソン漂流記』などが。李香蘭の映画もあったが、読み取れなかった。

やはりこの時代の韓国映画は見始めると止まらない。

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