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2015年12月 8日 (火)

ようやく『不屈の男 アンブロークン』を見る

今年アカデミー賞で撮影賞など4部門でノミネートされたけれど、なかなか日本での配給が決まらなかったアンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男 アンブロークン』の試写を見た。公開は2月6日という。これがずいぶんまともな映画だった。

日本兵による捕虜虐待を描いた反日映画という報道やネットの攻撃があったけれど、この映画を普通に見ればそれは一部でしかない。ルイ・ザンペリーニというアメリカ人が、イタリア系ということで差別に苦しみながらも生きてゆき、さまざまな困難を「不屈」の精神で克服してゆく話である。

出だしは主人公が爆撃機に乗る戦闘シーンで始まるが、すぐに少年時代に移る。イタリア系でいじめられながらも陸上競技で記録を出し、ベルリン・オリンピックに出るまでに至る。このあたりが青春ものとして気持ちいいし、オリンピックのシーンは開会式にファシスト姿のイタリア選手がいたり、ルイの出る5000m競争に日本人選手がいたり、何とも興味深い。

ルイはベルリンは練習で40年の東京が本番だと思っていたが、中止となる。代わりに東京の捕虜収容所にいく話かと思いきやその前に、太平洋での48日間の漂流がある。救命ボートで魚を取って3人で何とか生き延びる姿はまさに「不屈の男」。

ここまでで2時間17分の半分近い。後半が捕虜収容所の話で、前半が大森で後半は直江津。MIYAVI演じる鬼軍曹がエキセントリックで、オリンピック選手だったルイをことさらにいじめる。確かにその描写は見ていてきついが、たぶんこの程度は日本軍はしていただろうなというレベル。もちろん人食いもなければ、首切りもない。MIYAVIの雰囲気は明らかに大島渚の『戦場のメリークリスマス』の坂本龍一に近く、そう考えるとルイへのいじめも同性愛的なものかなとも思った。

とにかく印象に残るのは、ジャック・オコネル演じるルイの「不屈」の精神であり、その青い瞳だ。それは少年の昔から変わらず、映画が終わってクレジットで戦後の行動が説明されたり、本人の映像が現れるとその思いを強くした。

何より脚本や演出がしっかりしてお金もふんだんに使った力作だと思ったが、脚本にはコーエン兄弟、撮影は『ショーシャンクの空に』や『007 スカイフォール』のロジャー・ディーキンス、音楽は『グランド・ブダペスト・ホテル』のアレクサンドル・デスプラと一流どころを揃えている。さすがにアンジーだとこれだけのスタッフを集められるのだろう。

確かにオーストラリアで撮影されているので、どう見ても大森海岸には見えないとか、時々見える日本語の文字が少しヘンとかあるが、そんなことは映画ではよくあること。何より、このまっとうな映画が公開されることで、これまでの偏見が取り除かれることや、その根底にある表現の自由への束縛がこの国で解放されることが嬉しい。

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